強いキミを守るなら

まっくら ページ20

タクシーが停まって


あ、そういえばタクシーは地下駐車場には、基本的に入れないんだったと気づいた






.






まあけど、エントランスは目の前だし。

なんなら走れば





.






お金を払って、お礼を伝えてタクシーを降りる。

タクシーが去っていく気配がして





.







後ろに誰かが立つ気配がして






.







振り向いたら、口に布と甘い香り






.






身体に力が入らなくなって






.







私を抱えたその人は




いつも、わたしに優しく微笑んでくれた人で







.






白い大きい車に、私を抱えたまま乗り込んで






.







倒した後部座席に優しく、下ろして







.







私の着ていたシャツワンピースのボタンを一つずつあけて







.











.







その間も、私の身体には力が入らなくて


声もでなくて






.







ぐぐっと中に押し込まれる感覚も

痛みも

悲しさも

全部あるのに







.






なにも、できなくて






.






ただ







.






ただ







.







ああ、もう元には戻れないのだ、と








.







もう、誰にも愛して貰えないのだ、と








.








私は、汚れてしまったのだ、と







.








それだけは、わかって








.








.








まっくらな




なにもかも、まっくらな中で







.








私を見つめて





私の身体を、揺さぶる





その







.







事務所のカフェのお兄さんの

優しい笑顔を







.








見上げることしか、できなかった







.

まっくら→←いない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す