強いキミを守るなら

避難 ページ15

(岩本side)



正直、驚いた。事務所が、マネージャーとはいえ女の子がタレントの家に泊まることを許すなんて。

外に出ないなら、なんて、たぶん、一応建前として言っているだけで、別にいいんだろう。Aちゃんが事務所からどれだけ信頼されていて、Aちゃんを事務所がどれだけ手放したくないか、がわかる。

すごいね。






岩「荷物、まとまった？」





動きが止まっているAちゃんに声をかけると、ゆっくりこっちを見上げてくれた。





A「…たぶん」

岩「そっか。確認する？もう行く？」

A「も、いく」

岩「うん、じゃあ行こっか」

A「おねがいします」






…どうしようか、悩んだけど。
お泊まりセットと着替えが入った大きいリュックは自分で背負ったから…

俺は、クーラーボックスと自分の小さいバッグを持って、逆側の手はAちゃんと繋いで。
無意識かな、キョロキョロしながらゆっくり歩くAちゃんのペースにあわせて、ゆっくり歩いた。



駐車場から車に乗って、俺んちへ。掃除したし換気もファブもしたから…それにトレーニングで度々来てくれているから、大丈夫、とは、思うけどやっぱり不安で。
定位置に荷物を置いて、定位置に座って。
その姿を見て、やっと安心した。






岩「せっかく来たし、トレーニングする？」

A「…」

岩「Aちゃん？」







顔を見ると、目の焦点が定まっていなくて。

…決して弱くはないこの子を、ここまで追い詰めた犯人にものすごく腹が立った。




目の前に座って、正面からハグをして。

頭をぽんぽんとすると、ようやく腕が俺の背中に回ってきて。

弱々しく、背中に添えられた手は、まだ不安を表していて。




小さくて細くなってしまった身体を潰さないように、だけど安心させるように強く、抱き締めた。






岩「…」

A「め、わく…ごめんなさ…」

岩「迷惑じゃない」

A「けど…」

岩「忘れた？俺ね、Aちゃんのこと好きなの。だから、ウチにいてくれるの、すごく嬉しいんだけど」

A「めい…わく…」

岩「迷惑じゃない」

A「けど…」

岩「明日の朝御飯つくって？楽しみにしてるから」

A「ごめ…なさ…」

岩「俺がごめんだよ。10日間ずっとごはんと洗濯頼んじゃうじゃん」

A「め、わく…」


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それから。
壊れた人形のように「迷惑かけてごめんなさい」と言い続けるAちゃんを、一晩中ずっと、抱き締めていた。

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