愛情と幻想 (ページ6)

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思わず、離れた彼の胸板をぐっと押して突き飛ばしてしまう

桃「なっ、どうしてっ、俺男だって！」

黒「いった……暴力はダメでしょ…」

眉を顰めて、背中を気にする仕草

突き飛ばした際にフェンスに背骨が当たってしまったらしい

謝ろうとしたけど、でも、突然キスなんかしたコイツが……

黒「まさか、最初見たときは君だと思わなかったけど……一目惚れしたんだよ、大我くんに。どう？俺と、たまに会ってくれればいいからさ」

桃「！、……何おかしなこと、冗談でもたちが悪いです！」

あぁ、酔ってるのに、頭が追い付けない………

バカにされている気がして、思わずドレスを両手でぐっと掴んだ

最低だ、この人………

扉の向こう側では、クラシックの音楽が流れていて、食事やお酒を嗜みながら談笑する人たちが居たのに

俺はその隅で隠れるように観察をしていただけなのに、今はどうしてこんなことになっているんだ

ここだけ、別世界のような静けさと空気

黒「いいの？俺のこと拒否して」

また、ふっと笑みを浮かべた彼は俺の手を取って

なぜかとても大事そうに、やんわりと握った

黒「大我くんの家は、俺の家に懸けてるんだよね？俺、今まで父さんの期待には何とか応えてきたつもりなんだ。わかるだろ？さっき父さんが言ってたこと。俺を信頼してくれてるんだよ」

愛想は無いけど、信頼はしている

……まだ大学生なのに、偉いと思う。

でもこの妖艶な雰囲気を纏う彼は、今まで何を経験してきたのだろう

自分に羨望の目を向ける女性が溢れ返るほど居るからこそ、自分の家の仕事に意識を集中させたような……

やんわりと握られた手は、次第に引っ込めなくなるほどの強さで囚われた

怖い、逃げ場がない、フラフラする…

黒「俺がこの取引に何かそれっぽい理由を付けて反対すれば、影響してしまうと思うんだ。ね……大我くん、頭良いでしょ？」

桃「っ………会うって」

戸惑っていると、腰に腕を回されて抱き締められる

それから、誰もが欲しがるような低くうっとりとしてしまう声色で俺を脅す

黒「あぁ、良い関係を作りたいと思ってるよ。断ってもいいし…残念だけどね」

与えられた選択肢は、二択に一択

こんなの狡い。家の将来を俺の感情1つで、

俺の家の将来を、この男の私欲1つで…………

桃「俺、男です…」

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