重力と呼吸 (ページ29)

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桃『え、俺そういう目で見たことないから無理かも』

迷うこともなく無理なんて言い放ったきょも

…失恋

さらっと、可能性すら無いことを思い知らされてなんだか笑ってしまいそう

青「…北斗は？」

桃『だから、どうしたらいいか分からないから困ってるんじゃん。困ってるから樹に電話したの』

青「俺が告白したらどうするか聞いたときは迷わずに無理って言ったじゃん」

そう言うと、黙りこくったきょも

ゲームのやる気が失せてくる

何も話さなくなったきょもに生きてるか確認をしようとしたところ

電話越し、小さい溜息が聞こえた

桃『…なんかさ、俺変かもしれないけど』

青「うん」

桃『嬉しいなって思ったんだよね』

俺と違って2人にはブランクもあるのに、デビューしてから今日までのたった1年と数ヶ月で

男同士なんていう大きい壁も乗り越えて

完璧にきょもの心は北斗に向いている

俺がこの数年間、どんなに頑張ったって無理だったきょもの心を

いとも簡単に、鮮やかに北斗は奪っていくのか

もはや惚気を聞かされている気分になる

女の子が、付き合いたての彼氏の好きなところを披露しているような淡い恋心

桃『普通にご飯食べてたんだよ、北斗が美味しいって言ってたところで。そしたら急に、好きって』

あーあ…ノッてる

もう声がふわふわし始めてる

2人は両想いだってこと、実は分かってた

きょもは鈍感だから、北斗がきょもを好きなことに気付いていないし

きょもも北斗を好きなことに自分で気付いていなかった

…さっき、俺はそれを知らないフリしたし

きょも本人には、それに気付いてほしくないと思ってたくらい

桃『俺男だし、我儘だから困らせることも多いし、嫉妬凄くするし、共演してる女優さんも嫌な風に言っちゃうかもよって言ったんだ。』

悲しいくらいに天然で愛おしい

だってそれ、付き合った後の問題じゃん

北斗からしたら、そんなの勝利宣言と同じ

迷うとかじゃなくて付き合った後の話まで自分から言ってるの

どうしたらいいかわかんないって言いながら1人で先走ってんの、…めちゃくちゃ可愛いな

桃『俺より良い人沢山居るよって言ったの。そしたら北斗、京本しか見てないから京本以外はわからないって。俺すんごい恥ずかしくって、早めにご飯切り上げて帰ってきちゃった』

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