重力と呼吸 (ページ24)

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『大我、そろそろだ』

『……絶対離さないで』

君の願いなら幾らでも叶えてやる、と胸に誓った日のことを思い出す

もう、数え切れるくらいしか聞いてやれない大事な1つ

全身で強く抱き締めて、額に唇を落とした

…冷たい

段々と身体を蝕んでいく海水

一瞬にして奪われていく体温

『ジェシーっ、愛してる…！』

死を間近に湿気を含んだ言葉

ぎゅ、と俺の背中のシャツを握る大我の手

こんなにも愛おしいのに

…二人で生きていこうと約束をしたのに

俺は君を助けられないし

君と二人で助かることも諦めてしまった

『大我、愛してるから、また会おう』

嬉しそうに微笑む大我はゆっくりと瞼を閉じる

『…必ず見つけて』

長らく思えたこの会話は、たった数秒

君と楽になれる方を選んだ俺をどうか許して

二人で生きていきたかった

清らかな君の寝顔

可愛らしい口角の上がった唇の端には少しの皺

低体温によって青白くなった肌

もう今世では二度と目に写せない大我を、命が許す限り

どこか遠くの意識を持った瞳で見続けた

カタチ全てが綺麗で、それは海水に浮かぶ

そして天井が近くなった今、水中に沈んでいく

実在するかもわからない、無力な神様に命を奪われよう

また君と一緒になりたい

神様の罪滅ぼしに賭けて、未だ見えぬ来世に期待をする

………死にたくない、消えたくない

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