重力と呼吸 (ページ16)

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ムカつくから今日はもう無視してやろう

そう決めて靴を履き玄関のドアを開けようとすると、いつの間にか同じく靴を履き終えていた北斗に腕を掴まれる

黒「大我」

顎を掴まれて掬われるように唇を奪われた

桃「っ…ん、」

無理やり捩じ込まれる舌に翻弄されて、口内を好き勝手に暴かれてから

ちゅっと音を立ててそっと離れていく

朝からどこまでも元気な恋人を睨みつけてやりたくて、鋭い眼光を意識して目を合わせた

黒「誘ってる？いいよ、今日も俺んちね」

桃「違う、嫌だ」

嬉しそうな顔で頬を撫でられてから、玄関のドアを開けて外に出る

バカだ。

立ったまま睨んでも意味なんて無かった、若干の身長差も俺の敵か

その後もエレベーターの中で「今日の服どう？」やら「俺があげた眼鏡もってきた？」やらピーチクパーチクうるさい

全部聞いてないことにして無言を貫いた

黒「今日も好きだよ」

桃「知ってるよ」

黒「大我は？」

桃「その服、似合ってると思うよ」

素直に好きだなんて言うのは柄じゃないから、さっきスルーした俺じゃ到底理解の出来ない斬新過ぎる服装を褒めてみる

それから北斗がプレゼントしてくれた眼鏡をかけてやると、犬が笑ったみたいに、心が擽ったくなるくらいの笑顔が向けられ

エレベーターの中、監視カメラに映らない死角で北斗の大きな掌に俺の手をぎゅっと包み込まれた

黒「ねえ俺本当に頑張れるよ今日」

桃「それは良かった」

単純でうるさい北斗が今日も好きだと強く思った

気怠い朝

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