重量級 (ページ23)

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「ごめん、俺今あんまお腹空いてないから慎太郎先に1人で食べてて。冷蔵庫の中…は、何もないな。出前とる？」

『きょも今日何食べたの？』

「なんだっけ、ふふ、つまみなんか食ったっけ」

壊れてしまいそう。冗談混じりに吐いた言葉は、疲れが溜まっているのを隠すように感じる。本当に思い出せないの？今日、何も食べてないだろ。俺にまで嘘つかないでよ。妥協したくないのも、期待を裏切りたくないのも、睡眠や食事を摂る暇があるなら仕事をしたいのも、理解できるけど、わかってあげられない。

『きょも、ちょっと話そう。』

「待って、ごめん、あんま時間ない」

『…きょも、話がある』

「今話していいよ、ちゃんと聞いてるから」

妥協"できない"のも、期待を裏切っちゃ"いけない"のも、"そうでなくちゃいけない"のも、全部理解できる。強迫観念みたいになってる。眼鏡の奥できょもの左目がぴくりと動いて、それから貧乏ゆすりをしはじめた。イライラしてるんじゃない、焦ってるんだ。俺に話しかけられて、それに気を取られている間に仕事のことを考えられなくなる時間が出来てしまって焦っている。休んでほしいと伝えても、休んでくれない。仕事が仕事が、って、前とは大違い。

『きょも』

「ああもう、なに？つかごめん、タバコとって」

パソコン画面をじっと見つめながら唇を噛む仕草は、自分でも気づかないストレスに襲われている証拠。まずは大人しくタバコを取って、きょもに一本あげる。ライターで火をやると大人しく先を近づけて、煙がふわりと浮かんだ。短い時間で空気に溶けて無くなるのを見て、きょももこうなっちゃうかもしれないなんて縁起の悪いことを考えて視界がぼやける。きょもが息を吸って毒を取り込むたびに、じゅわっとオレンジ色が灯ってすぐに白く灰になるのが、胸を締め付けられるような。きょもの隣に座って、パソコンを床に置いてから堪らず抱きついた。

「きょも、俺のお願い聞いてほしい」

『……今は聞いてあげらんないよ。』

「ねえきょも、休んでも、止まっても、きょもは置いてかれないよ。きょもは凄いよ」

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