9 ページ9
何のために大学に近いとこに引っ越したと思ってんだと言わんばかりの気持ちで走って、どうにか三限の講義には間に合った。
むしろ二限から移動してくる生徒たちより先に講義室に着いたくらいだ。
私だって走ろうと思えば走れるのよ、体力が全くと言っていいほどないだけで…。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
息を整えるためにカバンを席に置いて、すぐには座らず立ったままいる。
すると続々と生徒たちがやってきて、席が埋まり始める。
見るな、こっちは今死活問題なんだ。この息が整わなかったら死ぬんだぞ。
天を仰いだその瞬間隣の席に、雑にカバンが置かれた。
「珍しいじゃんA。必修科目休むなんて」
「っ、はぁ、休むつもりなんて、なかったよ…っ」
そのカバンの持ち主は構内一の陽キャと言っても過言じゃない人物、田中樹。
正直何を間違っても私と友人になるような人物じゃない。
正直私ってのは口数が少なくても表情も乏しくて捻くれた思考で、本当に何から何まで人付き合いが向いてない。
っていうか人見知りなだけ！慣れたらよく笑うしよく喋る！そうなるまでが長いだけであって…！！
「A〜〜、思考の海泳いでない？戻っといで」
「……泳いでないよ」
話が逸れてしまったが、私が田中樹と仲が良い理由はいたって単純でありグループワークでグループを組んだから。
ただそれだけである。
というかたぶん、向こうが一人でいる人間を放っておけない性質なんだと思う。
私なんかは一人が好きなように見えて、誰かといるのも嫌いじゃないタイプだから田中樹みたいな感じで構ってくれる人間を喜んで受け入れる。
なかなか顔には出ないというか、出すのは恥ずかしいんだけど。
グループワークに誘ってくれて、それが終わった時にお疲れ会と称してカラオケの集まりに呼ばれて、なんやかんやで連絡を取り続けそこそこの頻度で遊び、講義も隣で受けるような仲に。
「ほらよ、レジュメ。要るだろ？」
「うわ助かる。さすがじゅったん気が利く」
「やめろじゅったんむず痒いな」
「なぁんで、爆モテじゅったんでしょ？」
はじめましての時の自己紹介を未だに引きずってイジる。
初っ端は笑いながらモテますからとか事実だしとか言ってたけど、ここ最近はこんな感じで適当に捌かれるようになった。
仲が深まってる感じがして結構嬉しいんだけど。
「さすがに代返はしてねーぞ」
「さすがにね〜」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 453人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
?(プロフ) - もちもさん» コメントありがとうございます！！そう言っていただけてとても嬉しいです！今ストックがなくなってしまって更新がゆっくりになってしまいますが頑張らせていただきます！ (11月7日 0時) (
レス) id: c0823c63c4 (このIDを非表示/違反報告)
もちも - 話の内容がめちゃめちゃ私に刺さりまくりで毎回脳が溶けていくような感覚がします笑🫠とっても面白いので続きを期待してます！ (11月5日 19時) (レス) @page28 id: e6a943ec70 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます！！そんなことを言ってもらえるなんて想像もしていませんでした！😭めちゃめちゃに嬉しいです💕 (11月1日 2時) (レス) id: 53aaf6ae71 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - お話がどタイプすぎて生きる意味が見つかった気がします＾＾ (10月31日 18時) (レス) @page25 id: 6c0d9e0967 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - さいだーさん» コメントありがとうございます〜！んふふ、二人に振り回されてく展開をお楽しみください！頑張ります〜💪🏻 (10月30日 1時) (レス) id: 53aaf6ae71 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：? | 作成日時：2023年10月17日 2時
