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あれからも樹は変わらず。
少し変わったことは遊ぶのに自分の家に誘うことや、私の家に来たがるようになったこと。
一回だけキッパリ「私樹とそういうことしないよ」って言ったことがあるけど、樹にしては珍しくなあなあに誤魔化されて終わった。
「男女の友情は成立しないって本当なんだね」
と言ったら
「そういうオトモダチも一種の友情だと思ってるけど」
と返された会話が記憶に新しい。
私はバイトに勤しみつつ、時差ながらも「じゃあ逆に男同士でもそういうオトモダチの友情成立すんのかよ」と独り言で樹に反論した。
明日樹にそう言ってやろうかと思ったが、どうせ忘れてるだろうからここで言って発散する。
樹といるのは楽しいんだけどなぁ…、最近目に見えすぎ。
せめて好きって言ってくれたら、付き合うとか……。
「…っと。ちょっと!Aさん!?」
「はい!?」
「お疲れですか?仕事に手がつかないなら、早めに上がってもいいですよ。ほら、今日雨降ってますし、酷くなる前に」
遠回しに邪魔だから帰れと言われている。
私は一言すみませんと謝ってお先に失礼させていただいた。
バックヤードに入って、退勤記録をして帰宅の準備をする。
「もー、あの人、今日機嫌悪い……」
いや、雨の日は誰だって多少なりとも機嫌が悪い。雨が好きでもないと。
私は案外嫌いではないんだけれど。雨のせいで頭痛がって言うとリアリティ増すんだよね。
実際頭痛持ちではあるし。雨よりストレスに影響されやすいだけで。
最近はあまり寝れてないストレスで、ずっと微弱にズキズキと痛い。
カバンに入れっぱなしになっている折り畳み傘で帰宅する。
マンションに着いて、エレベーターの中で折り畳み傘をたたむ。
雨の日はちょっと寒いなと思いながら、ゆっくりと顔を上げると自分の部屋の前に何かが見えた。
歩いて近づきながら少し目を凝らして、それが金髪の男の人が俯いて三角に身を縮めて座っているのだと気付いた。
私は思わずその場で立ち止まる。そのときに、靴裏と地面の間で砂が擦れた。
その音に顔を上げたその人は、間違いなく私の思った通りの人だった。
すぐに怒ってる樹の顔が浮かんで、慌てて踵を返してエレベーターのボタンを押す。
だが移動したばかりのエレベーターはすぐにはやってこず、視界の端に近づいてくる大我くんを見て階段に足を向けた。
慌てたせいで雨に濡れた地面と靴が滑った。階段から落ちちゃう、とギュッと目を瞑った。
「Aちゃーん、さむぅい…」
と言って私の身体に腕を回し、支えるように抱きしめられる。
「ね、危ないよ?」
この頭痛はストレスの頭痛が酷くなってるの?
それとも、また警鐘が鳴ってる?
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?(プロフ) - もちもさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけてとても嬉しいです!今ストックがなくなってしまって更新がゆっくりになってしまいますが頑張らせていただきます! (11月7日 0時) (レス) id: c0823c63c4 (このIDを非表示/違反報告)
もちも - 話の内容がめちゃめちゃ私に刺さりまくりで毎回脳が溶けていくような感覚がします笑🫠とっても面白いので続きを期待してます! (11月5日 19時) (レス) @page28 id: e6a943ec70 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!!そんなことを言ってもらえるなんて想像もしていませんでした!😭めちゃめちゃに嬉しいです💕 (11月1日 2時) (レス) id: 53aaf6ae71 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - お話がどタイプすぎて生きる意味が見つかった気がします^^ (10月31日 18時) (レス) @page25 id: 6c0d9e0967 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - さいだーさん» コメントありがとうございます〜!んふふ、二人に振り回されてく展開をお楽しみください!頑張ります〜💪🏻 (10月30日 1時) (レス) id: 53aaf6ae71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:? | 作成日時:2023年10月17日 2時