愛人の痴【Taiga.K】

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目が覚めると私は素っ裸で、深夜三時っていう微妙な時間。
ぽやんとする頭と、ずきずきと痛む股関節と下腹部。
壁掛け時計の秒針が刻まれる音に耳を澄ます。

隣に大我くんはいなかった。





柔らかくもないのに無理矢理開かれた足が痛い。
拡げたこともない場所を、押し拓かれて未だ何かが入ってるような挟まってるような感じがする。

「まだ、温かかったんだよなー……」

歩くだけで昨晩の痕跡がありありと伝わってきて、夢でも何でもないことがよく分かる。

もしかしたら私が寝た後彼女さんから連絡があって仲直りしたのかも。
そしたら、そりゃあ今日会ったばかりの女より、そっちに帰りたいよね。
全然、身体綺麗にしてくれてただけ、すごく優しいのかも。

そのときひと際強く吹いた風が肌を撫ぜて、大我くんの私への手つきを思い出させられた。
触らなかった場所なんてないんじゃないかというくらい、全身を優しく柔く撫でる温度なんてなさそうな精巧な見た目と違って熱い手。
それが触れるたびに上擦った声が漏れる自分を思い出して、どうしようもなく居心地が悪くなって俯く。

『痛かったら言ってね。よしよししてあげる』

そう言って額に落とされた唇の感触が記憶に新しい。

「はー……どう考えてもクズなのに、ありえないほど絆されちゃった」

最初から最後まで己のクズさを隠しているような様子はなかったのに、それなのに騙されて流れに流されたのはすべからく自分が悪い。
自分への戒めだと、下半身の鈍い痛みと共に一限に出席する。

「つか痛かったらよしよししてあげるって何。相場はやめてあげるとかじゃないの」

そう頭を抱えながら独り言ちていたら、パシーンと軽く背を叩かれた。

「なーに一人でブツブツ言ってんだよ！」

そう言って隣の席にドカッと座ったのは樹。

「痛いんだけど……」

そう言って樹と目を合わせたら、私の顔を見た樹はおかしなほど目を見開いた。
そして慌てた様子で着ていたジャケットを袖を通さず被せられて、そのまま口元が隠れるほどチャックをしっかり上まで上げられた。
えっえっ、なんて戸惑っているうちに樹が被っていたバケハまで被せられた。

「な、なに？暑いんだけど……」
「Aおまえ昨日夜遊びでもしたんか？」
「はぁ？」

「そういうことしたんならさ、風呂入って全身確認してから外出しろ」

事後の雰囲気漂わせすぎ、と吐き気でも催すようなベロを出して嫌気をさした顔をする樹。
私はなんのことだか分からなくて、困惑する姿を樹に見せるばかりだった。

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