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二限に遅刻したこと以外は何事もなく、全ての講義を受け終わり後は帰宅するだけ。
サークルにも所属しておらず、大学終わりに遊ぶような特筆すべき友人もいない。
樹には私以外にたくさんの友達がいるから、最後の講義が一緒だった訳でもないのにわざわざ誘いに来ることはない。
バイトは土日と水曜のみ。月曜の今日はない。
ちゃっちゃと帰ってどこで名前を知ったのか聞いて、さっさとどこかに行ってもらおう。
うちへの滞在は一日の約束だ。
別に名前をどこで知ったのかなんて聞かなくても…いや、気になるから聞きたい。
もうどこかに行く準備ができてるであろうと思って帰宅したのに、あの男は今朝と同じ格好のまま私のベッドで惰眠を貪っていた。
コイツこの後追い出される準備整ってるのか?
どこか行く当てに連絡済みなのか?
「はぁ……」
叩き起こすかどうか、本当に今すぐ出て行ける状態なのか。
いろいろ考えている知らず知らずのうちに、小さくため息が漏れた。
それを感じ取ってか軽く寝返りを打って、うっすらと目を開けたそいつは私を見て完全に起きた。
「おかぁえりぃ……」
「おかえりじゃないよ。行く当ては見つかったの?一日だけの約束だよね?」
「えぇ〜…?一日って24時間じゃないのぉ?」
一日ってそういう一日かよ…!!今日だけのつもりだった……。
「じゃあ明日の七時までってこと?」
「うん〜、おねがい」
枕を抱きしめるようにしてうつ伏せになったそいつは、あざとい顔を可愛らしく傾けてにっこり笑った。
私が帰ってきたのにいつまでものんびりと、ベッドを占領するその姿にイラっとしてテキストやノートやらが入ったトートバッグをその上に投げ込んでやった。
うぐっ、なんて苦しそうな声を出してさすがにのそのそ起き上がってきた。
「もう、乱暴者め」
「ていうか。どこで私の名前知ったの?教えてないよね?」
むぅとわざとらしい顔をした相手に、朝からずっと思っていた疑問をぶつける。
「んぇ?適当に言ったんだけど、当たってた?」
「名前がそんな適当に当たるわけないでしょ。あてずっぽうで名前当てられるなら、占い師でもしたほうがいいよ」
「俺って運良いんだよ〜」
「じゃあ宝くじでも買うことだね」
「もう!なんで人の言うこと素直に受け取れないの!」
「ありえないから!100%で嘘だからだよ!!」
ふくれっ面になってジトッと気に入らないような顔をしてこっちを見る。
納得いかないみたいな顔されたって、納得できないのは私のほうだろうがよ。
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?(プロフ) - もちもさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけてとても嬉しいです!今ストックがなくなってしまって更新がゆっくりになってしまいますが頑張らせていただきます! (11月7日 0時) (レス) id: c0823c63c4 (このIDを非表示/違反報告)
もちも - 話の内容がめちゃめちゃ私に刺さりまくりで毎回脳が溶けていくような感覚がします笑🫠とっても面白いので続きを期待してます! (11月5日 19時) (レス) @page28 id: e6a943ec70 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!!そんなことを言ってもらえるなんて想像もしていませんでした!😭めちゃめちゃに嬉しいです💕 (11月1日 2時) (レス) id: 53aaf6ae71 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - お話がどタイプすぎて生きる意味が見つかった気がします^^ (10月31日 18時) (レス) @page25 id: 6c0d9e0967 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - さいだーさん» コメントありがとうございます〜!んふふ、二人に振り回されてく展開をお楽しみください!頑張ります〜💪🏻 (10月30日 1時) (レス) id: 53aaf6ae71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:? | 作成日時:2023年10月17日 2時