偶像たる/ジゼラ・ヘルファム ページ2
感想を言い合える、活発で楽しい短編集にしていきたいと思っております。
皆様、お時間があれば是非執筆してみて下さいね。
それでは悪魔大司教のお話を……。
† † †
大聖堂には今日も可愛らしい信徒が集まっていた。
朗らかな陽の光が鮮やかなステンドグラスを通って、彩りを落としていく。それはまるで、色とりどりの多種族が集まるこの場所を象徴しているようである。
比較的暖かな本日は礼拝しに大聖堂を訪れる信徒が多かった。仕事の合間に本堂に顔を出せば、敬虔な信徒は僕への挨拶を欠かさなかった。
僕はいつも通りの微笑みを湛え、丁寧に挨拶を返していく。本来ならもう少しお話をしていきたいところだが、生憎僕にはしなくてはならない仕事がある。
僕は早々に信徒らと別れを告げた。
4年前に新設されたこの渡り廊下を静かに歩き、その静謐で清廉な雰囲気に、僕は手にしていた聖書を抱え直した。
あの富者の豪遊により得た綺麗とは言えない財産から、こんなにも無垢な学舎が出来るとは。
霞み一つない真珠のような純白が広がるこの廊下の床を感慨深くカツカツと踏みしめながら、僕は校舎の3階へと向かった。
今日はイヴィル教の神を中心に講義を進める予定だった。偶像は作らず、十字架に祈る意味を説く。
ある機会に南方に位置するイヴィルの教会を訪れたのだが、その時はやけに聖像や宗教画が目に留まったものだった。美しさは申し分ない。神聖ささえ醸し出す偶像は、確かに崇拝の的になり得るものであるが。僕には愚かに見えて仕方がなかった。
派生的に生まれた地方教会とは違い、イヴィル大聖堂は純血である。神聖なものを穢さぬよう、神の名前も呼ばないし形を象る事もしない。それが正しい崇拝の掟としていた。
それが暗に意味するのは『神など存在しない』という事実なのだ。
それらの伏せられてきた事実がいつしか賢しい慧眼の持ち主に見破られてしまうのだろうか。最高権力者である大司教が正しく「悪魔」であることも。
──恐ろしい
僕は口許に幽かな微笑を浮かべて階段の最後の段を踏み終えたところで、
「……っ、すみません」
麗しいオッドアイを持った青年の腕と、僕の聖書を抱えた肘が接触してしまったのだった。
「いえ、此方こそ申し訳ありません」
先に学生に謝らせるとは。僕は半歩引いて仰々しく僅かに頭を垂れた。
顔を上げると青年は、驚きの表情を浮かべていた。
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流離いのsecret(プロフ) - キューブさん» お話拝見しました〜！あたたかく素敵なお話ですね……！ラクーナさんの家族思いが伝わります。ご夫婦のイヴィルに対する気持ちの違いが深いですね……！ (2021年9月12日 18時) (
レス) id: af1699faf6 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - 更新完了しました！なんだかよく分からない締め方になってしまいましたね… (2021年9月11日 19時) (レス) id: 8222095e45 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - to:叶様 うちの大司教を使って頂きありがとうございます〜！寮と名前を言い当てるくだりは、前ページのお話を汲んで下さったのでしょうか！無宗教であるカナアさんにとって大切な宗教が見つかると良いなと思う素敵なお話でした！ (2021年9月5日 10時) (レス) id: af1699faf6 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - 本編始動にあたって、一編お話を書いてみました！皆様も是非執筆してみて下さいね！編集する際は此方に報告をお願い致します！ (2021年9月2日 21時) (レス) id: af1699faf6 (このIDを非表示/違反報告)
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