普通の恋のお話。 (ページ31)

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音楽室までの距離が思った以上に長いことを
少しありがたいと思う

「先輩、文化祭のジンクス知ってます？」

横を歩く先輩にふとそのことを聞いてみる

「あ～！後夜祭に告白したら成功するってやつだよね～私達も去年は浮かれてたなあ。」

そういえば、去年成功したカップルと同じクラスでね…！とか話を楽しそうに続けるA先輩の横顔を見つつ。

「…A先輩は、後夜祭…どうするんですか…」

我ながら勇気を振り絞ったと思う

「え、私？？私は、ほら、片付けしてるんじゃないかな…笑」

少し寂しげな感じがしたのは俺だけかな
さっきまでの明るさが消えた先輩。

まだ光成のことを好きなのかな…

考えても仕方ないのに、考えてしまう

「…光輝くんはどうなの？さっきの女の子！！可愛かったよね！！！」

やっぱり見てたんだ

もうやるう～！なんて茶化してくる先輩に
少し腹が立って、、

だって俺、祭りの時告白してるし。
それに学校始まってからも諦めない宣言をしている。

なんでここまで鈍感なんだろう

俺が本気で好きだということに気づいてないのだろうか

「…俺、A先輩のこと後夜祭で誘おうと思ってます。」

立ち止まって言う

「え、でも、さっきの子、、」

「今は先輩と俺の話ですよね？」

少し声をあらげてしまう
幸い、音楽室の前ということもあって誰もいない

びっくりしたような顔で「…うん」とだけ言う先輩

「…ごめん、私。」

申し訳なさそうな顔をして謝る先輩に
俺もすごく申し訳なくなる

そんな顔させたいわけじゃない。

「いや、俺のほうこそ。」

少しの沈黙
ガラッと音楽室の扉を開ける音だけが響く

「、、こ、ここで大丈夫！ありがとう」

気まずい空気を察して先輩がここでいいと言う

ダンボールを置いて俺は改めて先輩の方を見た

「後夜祭、俺はA先輩といたい…ですっ！」

「……考えとき…ます…。」

少し顔を赤らめてそう言った先輩は
なんだか照れているような気がした

…少しは、俺のこと気にしてくれてるって。

自惚れてもいいのかな