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トッポside
血祭りにあげる、という言葉はまさにこういうことやと思った。
ガムは喧嘩でも冷静で、適度な加減ができるほうや。その彼にしても、なかなかの暴れっぷりやった。八幡がお目覚めになるまでにはけっこうかかるやろう…
やけに落ち着いた頭で分析できたのは、ガムが俺を抱き上げ、声をかけてくれたときの手つきや表情があまりにも優しく切なげやったから。
この人、俺を助けに来てくれたんや、もう大丈夫なんや、と思えた。
身体の力は鈍ったままやけど、胸がドキドキとうるさいのは、なんでやろか。
「お仕置きはこのくらいにしといたるわ。二度とトッポの前に現れんなや」
そう言ってこちらを振り返ったガムは、強張った顔を緩めた。
「車、帰ろか」
破られて床に散らばった俺の服を見て、これやあかんな…と自らのジャケットを脱いで俺の腰に巻いてくれた。
ガムの顔は無傷かと思いきや、鼻血が出てしまっている。
「ガム、鼻…やられたん…?」
「や、大丈夫、全然、うん、いや」
やけにおどおどしながら顔を赤くしたガムは、また俺を抱き上げた。瞬間、どきん!とまた胸が高鳴る。
俺、どうしたんやろ…?
女、いや子どもみたいに丁寧に抱っこされたままバーを出る。外気が冷たくて震えると、「ごめん寒いよな、急ぐから」と、ガムは夜の階段を駆け下りた。
車の後部座席に、ガムと2人で乗り込む。ジョニーと助手席のマックは俺の姿を見て驚き、しかし詳しくは聞かず、ありがとう、ご苦労さんと言った。
走り出す車の中は薄暗い。ガムはずっと俺を抱きしめたまま。
「トッポ、ごめんなほんま。未然に防げなくて」
「大丈夫やで、ありがとう…まだ触られただけやったし、ガムがおらんかったらもっとやばかったし」
筋肉質な腕の中は不思議と心地よいけど、身体は熱いしやっぱりドキドキするし、おかしい。
「…えっと、その、トッポ」
「ん?」
「チューはされへんかった?俺が来るまでに」
やけに不安げな目で聞いてくるガム。されてへんよ、と答えると、何故かほっと力を抜いた。
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るーしー(プロフ) - ガムトポすごく萌えました😭最後の鈍感トッポが、可愛くて可愛くて可愛すぎます。。ピンチに駆けつけるガムもかっこよくて、最高でした😭素敵な小説をありがとうございます! (2023年3月23日 2時) (レス) @page10 id: f4098d03e8 (このIDを非表示/違反報告)
もち苺。(プロフ) - あかかめさん» ありがとうございます!私もヒロイン感あるしょうちゃんが好きです笑 この先もゆっくりではありますが頑張るのでよろしくお願いします!! (2017年9月5日 20時) (レス) id: e64daadfce (このIDを非表示/違反報告)
あかかめ - 今更ですが全シリーズ読ませて頂ました…!章ちゃん受け+受けが危ない感じになって助ける的なお話が大好きなので生き甲斐になってますwお忙しいでしょうが無理せず頑張って下さい!長文、乱文失礼しました。 (2017年8月8日 20時) (レス) id: dd37e16602 (このIDを非表示/違反報告)
もち苺。(プロフ) - とまころろさん» いつもありがとうございます!これからもなかなか書けない期間があると思いますが、たまーにでも覗きにきていただけたらと思います。これからもよろしくお願いします! (2017年7月13日 23時) (レス) id: 9309636f94 (このIDを非表示/違反報告)
もち苺。(プロフ) - 青菜はやとさん» いつもありがとうございます。切甘は難しいです!笑 でも可愛いヤスくんは全作品に欠かさず書いていきたいです笑 (2017年7月13日 23時) (レス) id: 9309636f94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もち苺。 | 作成日時:2017年3月23日 22時