やすくんと年下組 part11

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錦戸先輩の隣に並んで歩く帰り道。


このポジションに憧れる女子は何人おるんやろか、とか思うと緊張してしまう。



錦戸先輩てほんまにイケメンやなあ、なんてチラチラ横顔を見ていたら、急に目があった。わ…！




「俺な」

「は、はい？」

「前に安田の記事読んだことあんねん」

「え、ほんまですか？」



「ギター好きなんやなあ。バンドのこととかも詳しく書いてあって、読み込んでもうたわ。書き手の安田っちゅうのが誰かは、そん時は知らんかったけど」


一瞬ぽかんとしてもうたけど、すぐに胸が熱くなった。ギターの記事、それは1カ月前に僕が夢中で書き上げた、一番読んでほしかった記事。


校内新聞なんてそうそう目に止めてもらえへん。それが、まさか錦戸先輩に読んでもらえてたなんて。



嬉しい。



「俺な、笑顔になったわ！おまえの記事で。せやからこの取材も恥ずかしいけど、協力したい思ったんやで」


その時初めて、僕は自分に向けられた錦戸先輩の笑顔を見た。


ぐらり、と心が動いた気がした。



今の笑顔は、記事には載せたくない…



僕だけのもんやと思った。




「まあ…でもほんまに、俺に関する記事なんかで注目集められるんかなとは思うけど」

「女の子はみんな錦戸先輩の記事見つけたら喜ぶと思いますよぉ」

「…女の子は俺が消しゴム貸すだけでも喜ぶで」

「ええー？」

「冗談やって」


むー、このモテ男が。ニヤリと笑う顔は憎めないけど。


ふ、と会話が途切れ、歩く錦戸先輩の手の甲に傷ができてるのに気づいた。


「先輩、手に傷が…」

「ん？あー、部活中に全身でコケた。おまえに撮られてなくて良かったわ」

「絆創膏あります！」


バッグから取り出した絆創膏を錦戸先輩の手に貼ってあげると、あんがと、とカワイイ照れ笑いをしてくれた。ほんのり顔が赤かったのは、夕焼けのせいかな。




照れた顔が素敵、これも僕だけの秘密の情報にしたいなと思った。

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