やすくんと年下組 part11

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大倉side



ヤスの悲しそうな顔に、耐えられなかった。


俺が勝手に自己嫌悪に陥ったせいで、可愛い恋人がこんなに不安を感じている。


このままやとあかん。やっとそう思えた。だから今、打ち明ける。



「最近、すっぴんで鏡見ると絶望すんねん。

しわが増えた。ほうれい線が濃くなった。肌もさらに状態悪なってきたし…



俺。歳をとった」


ヤスは予想外やったのか、びっくりした顔で俺を見つめている。


「そんなん…」

「うん、当たり前やで。でも怖かった。

俺らは男同士や…若くて綺麗やった頃と、状況が変わったらどうなる？ヤスは…」


深呼吸をした。言う。はっきりと。






「ヤスは。おじさんを、愛してくれますか…」



それが、不安やった。


普通のカップルとは違うということ。かっこいいと言われてきた自分が、ただのおっさんになっていくんやないかってこと。


ヤスがいつか、若い女の子のほうがええって…いや若くなくとも、せめて綺麗な女性がええって、目を覚ましてまうんやないかってこと。



怖くて、ヤスに近くで自分を見せるのをためらうようになってしまった。


恐る恐る様子を伺う。すると、ヤスは、ため息をついた。



「おーくら」


その声は、名前を呼ばれただけで涙が出るほど優しくて。


俺の髪を撫でてくれた手はあったかい。



「俺は、おーくらを、愛せるよ」


そう言って不意打ち、ちゅっと唇にリップ音。


「おじさんになっても大倉は楽しそうに笑うやろ？

おじいちゃんになっても、ヤスーってニコニコしてくれるやろ？

俺が困ったら、いつでも頭撫でてくれるやろ。



知らんおっさんなんか絶対愛せんよ？同じく、若い男やろが女やろが、もう愛せへんよ。俺は…」



おーくらしか、愛せへんの。



そう言って抱きついてきたヤスを、今度は受け止めた。


言葉を返せずただドキドキしている情けない俺に、ヤスは言う。


「なんなん。もう。そうゆうのは、俺のセリフちゃうの？

おまえより早ようおじさんになっていくんやで。可愛い可愛い言われてた時代にはごまかせてたもんも、そろそろあかん…」


「や、ヤスは！ヤスはちゃうの。ヤスは、しわが増えてもなんでも可愛えの！誰よりも可愛い…ほら今もむっちゃ可愛いで。おまえ何言うてるん？可愛いしかないでっ」


この小ささとか。前歯とか。目尻のシワも。アホなとこも、健気なとこも。


ヤスって凄い。全部可愛い。それは間違いないのに。

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