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「でさ…監督にな、……って言われてな…」
「うん、うん」
午前3時、あったかいスープを頂きながら、ポツポツと口からこぼれたモヤモヤ。
抱え込んでた自覚はなく、ただ自分の調子が悪いのがいけないと思ってた。「それが抱え込んでるってことなんやで」と教えてくれるのは、いつも章ちゃんで。
吐き出したすべてを受け止めて、ひとつひとつ解してくれのも章ちゃんで。
「まる、ほんまに頑張り屋さんやなあ。監督も、周りの俳優さんも、そんなまるがおるから、より高い質を求めていけるんやろな」
…章ちゃんって魔法使いなんかなぁ。
誰にも言えない俺の内側を、章ちゃんだけが見てくれる。昔からそう。そして、彼の人間性がたっぷり詰まった言葉で包み込んでくれる。
ほら。もう心がズキズキしなくなってる。あんな極限やった自分が息を吹き返してるんよ。
話し終わり、皿を片付けながら、「お風呂沸いてるよー」の声に泣きそうになり、おでこにキスした。
風呂上がり、寝室に向かう。ベッドにちょこんと座って待っててくれた恋人は、うとうとしていた。
「章ちゃんも、お疲れ様。舞台、絶対見にいくからな。薔薇の花束持ってくよ」
「んぅ…?あ、まる、お風呂上がったあ?」
「うん、うん。お待たせしたな、寝よか」
小さな身体を抱きしめて、布団の中に潜り込む。
「…章ちゃんの膝枕でな、夢を見た」
「お仕事の?」
「ううん、未来の嫁さんの」
「…どんな女の子やったぁ?」
平然を装い聞いてくる恋人くんやけど、表情と身体が固くなったのがわかった。ああ、ちゃうって、誤解せんといてや。俺の嫁さんは…
「章ちゃんやった」
「…へ?」
「嫁さん、章ちゃんやったよ。絶対そうやった。顔は見えへんかったけど、青いエプロンしてちっこいけどゴツい手でさ、声も身体つきも全部章ちゃんやったよ」
「…ほんまに?」
ベッドの中、抱きしめられながら俺を見上げた章ちゃんは、
目を潤ませていた。
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るーしー(プロフ) - ガムトポすごく萌えました😭最後の鈍感トッポが、可愛くて可愛くて可愛すぎます。。ピンチに駆けつけるガムもかっこよくて、最高でした😭素敵な小説をありがとうございます! (2023年3月23日 2時) (レス) @page10 id: f4098d03e8 (このIDを非表示/違反報告)
もち苺。(プロフ) - あかかめさん» ありがとうございます!私もヒロイン感あるしょうちゃんが好きです笑 この先もゆっくりではありますが頑張るのでよろしくお願いします!! (2017年9月5日 20時) (レス) id: e64daadfce (このIDを非表示/違反報告)
あかかめ - 今更ですが全シリーズ読ませて頂ました…!章ちゃん受け+受けが危ない感じになって助ける的なお話が大好きなので生き甲斐になってますwお忙しいでしょうが無理せず頑張って下さい!長文、乱文失礼しました。 (2017年8月8日 20時) (レス) id: dd37e16602 (このIDを非表示/違反報告)
もち苺。(プロフ) - とまころろさん» いつもありがとうございます!これからもなかなか書けない期間があると思いますが、たまーにでも覗きにきていただけたらと思います。これからもよろしくお願いします! (2017年7月13日 23時) (レス) id: 9309636f94 (このIDを非表示/違反報告)
もち苺。(プロフ) - 青菜はやとさん» いつもありがとうございます。切甘は難しいです!笑 でも可愛いヤスくんは全作品に欠かさず書いていきたいです笑 (2017年7月13日 23時) (レス) id: 9309636f94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もち苺。 | 作成日時:2017年3月23日 22時