やすくんと年下組 part11

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錦戸side

鮮やかな桜が幻想的な光に照らされる並木道。

3月になってもまだ夜は肌寒く、俺のあげた手袋をしてる章ちゃん。

寒いやろって手を繋ぐ口実がなく、プレゼントを手袋にしたことを少しだけ後悔した。


「綺麗やなあ…！桜って毎年見るのに、毎年グッと心掴まれるなぁ」


おまえのほうが綺麗やで、なんてありがちなセリフが頭に浮かんでは消える。それくらい、桜を見上げる章ちゃんの横顔は美しい。


通りにはカップルが何組もいて、手を繋いだり腕を組んだりしている。


そこでふと、自分らを客観的に見て、気づいた。


「章ちゃん…あの」

「なぁに？」

「ごめん、俺とで…良かったんかなって」


章ちゃんは一瞬きょとんとしたけど、すぐに俺の言いたいことがわかったらしい。


一般的なカップルはもちろん男女。章ちゃんは、男同士でこんなデートスポットに連れてこられて、ほんまに良かったんかなって…。


不安が隠しきれない俺に、章ちゃんは微笑む。


「…錦戸さんとやから、喜んだんよ」






「え」





「…っ、や、その」




照れたように慌てて目を逸らした、その顔に何かが苦しくなる。



思わず、手袋の上から手を握っていた。


あ、と思い、あかん離さんと…なんて理性が、手先まで伝わってくれない。章ちゃんと手を繋げたことが嬉しくて身体が離れてくれない。



あかん。俺らは男友達やのに。引かれる前に、弁解せな…



「錦戸さん」

「ぇ、えああ！ごめ、ごめん」

「手袋外しても、…ええ？」


俺が余計なことを考える間も無く、章ちゃんは繋がれていた右手の手袋をすっと外した。


それを俺の右手に被せ、そして、素手の小さな右手が、行き場を失った俺の左手に差し出される。



ゆっくりと、指を絡めた。

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