やすくんと年下組 part11

42 ページ42

3



放課後のサッカーグラウンド。


いち早く教室を抜け出して張り込みをしていると、やがてサッカー部員たちがやってきた。



とりあえずグラウンド沿いの道から写真を撮ろう。仲間にどんなふうに接してるかも見ておきたい。



トレーニングする姿も、ボールを追う姿も、全部絵になる。けど、スクープと呼べるようなもんはないなあ…


「オイ、おまえら私語禁止や！なめとんのか！」



うわわわわ。先輩怒ってる！


新入生らしき子たちがビクッとして、慌ててトレーニングを再開している。はー、これが噂の厳しい錦戸先輩か。でも運動部ならこれくらいはやるよな。


とりあえずメモとカメラを交互に使いながら情報を集めていると、いきなり先輩がこっちに向かってつかつか歩いてきた。


「おい、安田」

「は、はい、すいません！」


「そこ危ない。ボール飛んでくるで。

あと、さっきからなんも飲んでへんやろ、今日30度やぞ」


「あ…はい、ありがとうございます！」


錦戸さんは自分のスポドリボトルをぐいっと差し出し、「飲んだら、あっち行っとけ」と離れた木陰を指差した。



なんか…


思てたんと違う。


言葉はそっけないけど、会ったばっかの僕のこと気にかけてくれるし。厳しいとか言われてるけど、人一倍真面目にサッカーしとるのはよくわかるし。


『錦戸先輩は、優しくて、部活熱心』



メモに書き、またグラウンドの彼を見つめる。


たくさんの部員の中で、ひときわ輝いてるように見えるのは、なぜだろう。




もっと知りたい。錦戸先輩が、どんな人なのか…。



.

43→←41

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す