やすくんと年下組 part11

エネルギーの源 ページ28

マルside


映画の主演を任されることになった。


俳優の端くれとしてこの世界で頑張ってきた自分にとって、貴重な機会かつ重要な仕事やった。この作品は自分のこれからの活動を大いに左右すると感じていた。


「カット！そこもう一回、もっとこうして…」


またや。また同じシーンで俺が演技指導。



…集中せな。まぶたが重いなんて言うてられへんぞ。忙しいとか寝不足なんてのは言い訳や。


そう自分に言い聞かせて、今日も深夜まで仕事をこなしていく。




「お疲れ様です丸山さん。明日は8時に迎え来ます」


「…うん、ありがとな、おやすみなさい」


撮影後、車で送ってくれたマネージャーにお礼を言って自宅に帰った。明日は大阪の番組のロケ収録、睡眠時間は4時間ほど。



シャワーを浴び、寝床に入って、もどかしい気持ちでスマホを開いた。




目当ては、愛しい恋人からのメッセージ。1日1回以上は必ず連絡してくれるあの子。


『まる、撮影お疲れ様。うまくいったかな、いかなかったかな？どちらでも、まるは今日もぐんと成長したってことやで！1日1日大切に、身体も大切にな？大好きやで。おやすみなさい』



最近は少し絵文字も落ち着いてきた文面。彼は、俺が落ち込みやすいことを十分にわかっている。芯に優しい言葉が、疲れた身体に染み渡る。


『章ちゃんもお疲れ様さま。舞台稽古大変やろ？無理せんでな。来週、収録で会えるな！楽しみやで』


ああ、ほんまに言いたいのはこれだけやない。


指がタッチパネルの「あ」に触れる。会いたいな、早よ。来週まで待てへんなあ…そう打ちかけ、ゆっくり消して…




愛してるよ、と文を締めくくり、頭から布団を被った。




.

29→←27

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す