48 ページ50
･
「……ただ、珍しかっただけじゃない？」
「茶化さないで。俺、これから最低なこと言うから」
投げやりに笑って、ため息をついた。
「ずっと好きだと思ってた女性に好意を伝えられてんのにさ、真っ先に頭に浮かんだのは別の女の子だった。」
「……ほくと？」
意味が、わからない。そんなのおかしいじゃん。北斗が好きなのは桜庭ちゃんで、付き合えて幸せそうで。私は、それでよかったのに。
「言い聞かせたよ。そんなわけないって。まだ物心つかない時からよ？泣いて好きって言われて、断るなんてありえないじゃない。なのにさ、」
言いづらそうにする北斗。深く息を吐いて、決心したように話し始める
「……あの時、Aの手を離したくなかった。離したら終わりってその時にわかったから。」
「……なにそれ」
いつのとかそんなの聞かなくてもわかった。付き合うことを伝えられた、あの日のことだ。
「京本先輩がAの手を引いて歩いてくの見てさ、気づいたの。振り返れって何度も思ってさ。笑っちゃうでしょ。…俺は俺が馬鹿すぎて嫌になったよ(笑)」
「ほくと、」
「なんも言わないで。気づくの遅すぎて、好きな子も幼馴染も傷つけるとかさ、最低でしょ」
私から顔を背けて、無言で講義室を出ていく北斗。追いかけて、そんなことないよって言わないと。これから講義でしょ、って。でも思考が追いつかなくて、なかなか体が動かない
扉の開く音、見慣れない教授が講義室に入ってきて、やっと追いかけなくては、と走った。とりあえず講義室を出て廊下をまっすぐ。遠くに姿勢のいい北斗をみつけて、周りの目を気にせずに全力疾走。
「ほ、くと！」
立ち止まって欲しくて、やけに大きい声で呼んでしまった。だって、あんな悲しい顔のまま、また1人で過ごそうとする北斗をほっとけない。
「……こないでよ。」
「だって、ほくと、」
「嬉しいとか思っちゃう俺がやなんだよ」
肩で息をする私をみて、泣きそうな顔で私の手を握った。その手が震えてるのがわかって、思わず私も泣きそうになる。
「きっぱり振ってもらえる？」
自傷的に笑って、それからぎゅっと手を握る力を強めた。
「Aが好きだ」
泣き笑いみたいな顔で、私の目をまっすぐ見て北斗は言った。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1688人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Nappy(プロフ) - 素敵な作品ですね！ (2021年11月21日 21時) (
レス) id: 6b7a5f4d24 (このIDを非表示/違反報告)
キミ(プロフ) - いけない時間から1を読み始めたら深夜を過ぎて一気読みです！仕事かうまくできるか不安でしたが、感情を揺さぶられて、涙するお話が読めたので、心は満足です！続きを楽しみにしてます！ (2021年11月18日 1時) (レス) id: d4e3c92b39 (このIDを非表示/違反報告)
やん - 沢山更新嬉しいです！！！！！！日々の楽しみです^ ^ (2021年11月8日 0時) (レス) @page25 id: a4d97af994 (このIDを非表示/違反報告)
華恋(プロフ) - このお話の京本くん好き過ぎます。どのお話も大好きです。更新頑張ってください⚐ﾞ (2021年11月7日 21時) (レス) @page20 id: 2b37390e07 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - だめだ。あまりにも好きすぎる。 (2021年11月7日 19時) (レス) @page20 id: 5f27ff9118 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ
| 作成日時：2021年11月4日 20時
