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「…これにかけてんだよね、俺」
「どういうこと?」
「…卒業してからも頻繁に会いたいってこと」
理屈交じりな愛の言葉は随分とわかりづらい。最初から普通に言えばいいのに。北斗らしいな、なんて思わず笑みを零せば不服そうに睨まれる。
「笑うとこじゃないんだけど」
「単純なんちゃら…効果?とかいう必要なかったよ。逆に難しかったもん!北斗は無駄に話を長くするよね」
よく怒られるじゃん。話長いってさ!なんて、揶揄わなければよかった。握られた手を引き寄せられて肩が触れる。
「好きだから毎日会いたいって言えばいいわけ?」
「………すみません、レモン酎ハイください」
「うわ。よく流せるね。俺の真剣な告白を」
「北斗次何飲む?ペース遅くない?」
全部きいてないふり。まだ半分以上入っているグラスを飲み干すと、喉の奥がきゅっとなった。ペース早いってまた北斗に怒られるやつ。恐る恐る隣を見れば微笑ましげにこちらを見る北斗と目が合った。
「……怒んないの?」
「なにを?」
飲みすぎ、とか。これ自分で言うの情けない。本当に先生とか親に怒られてる気分だよ。ごにょごにょと語尾を誤魔化せば、吹き出すように笑われる。
「別に送るからいいよ。飲みたい気分なんでしょ?」
「………こわ。なんなの?厳しくも優しい北斗を返してよ」
「はいはい。あ、入社式いつ?社会人になるギリギリまでの満喫しなきゃさ、」
「満喫、って!北斗が絶対言わないやつ。」
「いいから。卒業式の後も、…って欲張りか。だめ?」
勝手に約束をとりつけてくれたら、仕方なく、なんて言い訳ができたのに。私に選択肢をくれるのやめてほしい。「だめじゃない」そう小さく呟いた声は北斗にしっかり届いていたらしい。緩みきった顔、優しく私をみつめる。
「……嬉しい、とか不謹慎?」
「うん。不謹慎。…ほら、飲み足りないよ」
私は照れた時に酒を勧める、くらしいか逃げ道が無いみたい。握られたままの手もこそばゆい優しい視線も全部が穏やかで。昨日のことが嘘みたい。…流されてしまえばこんなにも楽なんだ
「Aは程々にね、…最後まで付き合うけどさ」
「…ありがと」
届いたレモン酎ハイに口をつけて、優しい北斗に可愛くない返事をした。
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かん(プロフ) - はじめまして。クズでもどこかきゅんきゅんしまくりでした笑 (2022年3月25日 15時) (レス) id: 08214fe36c (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - mi.さん» 返信が遅くなってすみません!そう言っていただけて嬉しいです(;_;)!嬉しいお言葉ありがとうございました! (2022年3月11日 13時) (レス) id: d8cb6056f0 (このIDを非表示/違反報告)
mi.(プロフ) - まめこさんのお話すっごく面白いです…!何度も読み返していたので、49話読み終えて涙が止まりません(;;)最後までお話楽しみにしてます。 (2022年3月2日 23時) (レス) @page49 id: f783054b71 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - 甘さ控えめ太郎さん» はじめまして!私もcaramel読ませていただいております…!リアルな大学生感と切ない関係性、たまらなく大好きです🥺私も酔っ払った🐻さんに呼び出されたい人生でした… (2022年2月5日 7時) (レス) id: 08ec96d6c5 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - Nappyさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます🙇♀️励みになります…!完結までお付き合いいただけたら有難いです…! (2022年2月5日 7時) (レス) id: 08ec96d6c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2021年11月29日 1時