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明後日引っ越す予定だから前日、つまり明日までしっかりとバイト入れていた。だらだらと北斗と話して、たまにバイト終わりにご飯を食べる。割とすきな時間だった。けど。
「北斗、明日で最後だしお疲れ会は明日しようよ」
「じゃあ明日はお疲れ会で、今日は失恋おめでとうの会だ」
「……おめでとう、って」
笑みを絶やさず言う北斗が少し憎らしい。せめて嘘でも慰める、とか言ってほしいよ。そういう意味を込めて北斗をじ、と睨めば「ごめんごめん」と謝る。
「慰めるって。…ほら、行くよ」
自然と握られた手、初めて繋いだわけじゃないのに以前とは違う。恥ずかしいのか、照れくさいのか、北斗の自分に対する思いを知ってこれを素直に受け取るのは違う気がする。コンビニのロッカールームをでて、大学方面の居酒屋へ多分向かってる。通い慣れた道、引かれた手は優しくても必要のないもの。酔っ払ってるわけでも、ましてや恋人同士でもないのなら余計に。
「……手、大丈夫だから」
「Aが大丈夫でも俺が大丈夫じゃない」
「意味わかんない」
わかんなくていい、なんてぶっきらぼうに呟いて握られた手を離そうとしない。少し樹より華奢で、それでも私より大きい北斗の手。
「私、北斗のことそんな風に見れないよ」
「言ったじゃん。俺はここからなの。答え出すのまだ早いって」
「……友達、だもん」
「男女の友情なんて成立しないでしょ。…Aがよくわかってるくせにさ」
「…それ言われたら、」
なんも言えないだろって目が物語ってた。友達の立場を利用して樹との時間を作ってたんだから。文字通り、なんにも言えない。
「……意地悪だよ、北斗」
「じゃあでれっでれに甘やかしていいわけ?A余計に警戒すんでしょ。」
「…なんでも知ってるの?私の事」
「そりゃまあ。…俺の方が前から好きなわけだしね」
ストレートな言葉、好きだなんてそんなあっさり言うものじゃない。友達のはずの北斗に照れるなんて、そんなのおかしい。
「ほら。…照れんのやめてよ」
「……こっちがだよ。そんなの言うのやめて。」
「それは無理な話だね」
意識させたいよ、俺。なんて。握られた手の温度が途端にリアルになる。何食べたい?って普通の会話にすら緊張する。緊張のきの字もなかった昨日までと比べたら北斗の目論みはとうに成功しているよ。
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かん(プロフ) - はじめまして。クズでもどこかきゅんきゅんしまくりでした笑 (2022年3月25日 15時) (レス) id: 08214fe36c (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - mi.さん» 返信が遅くなってすみません!そう言っていただけて嬉しいです(;_;)!嬉しいお言葉ありがとうございました! (2022年3月11日 13時) (レス) id: d8cb6056f0 (このIDを非表示/違反報告)
mi.(プロフ) - まめこさんのお話すっごく面白いです…!何度も読み返していたので、49話読み終えて涙が止まりません(;;)最後までお話楽しみにしてます。 (2022年3月2日 23時) (レス) @page49 id: f783054b71 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - 甘さ控えめ太郎さん» はじめまして!私もcaramel読ませていただいております…!リアルな大学生感と切ない関係性、たまらなく大好きです🥺私も酔っ払った🐻さんに呼び出されたい人生でした… (2022年2月5日 7時) (レス) id: 08ec96d6c5 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - Nappyさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます🙇♀️励みになります…!完結までお付き合いいただけたら有難いです…! (2022年2月5日 7時) (レス) id: 08ec96d6c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2021年11月29日 1時