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「今日はそういう気分だからさ。」
「ふーん。てかまじで俺の好きなのばっかじゃん」
「お礼だからねー。」
半分本当で半分嘘だ。酔いたい日があるように酔いたくない日だってある。最後って決めた今日、酔いに任せて変なことを口走る可能性をなくしたかった。それに。本当は私だって可愛くて甘いお酒は嫌いじゃない
「ねぇ、こっち」
「……引っ越す前に物増やしてどうすんの」
座れと促された場所には、真新しいクッションが置いてあった。「今日届いた!」なんて嬉しそうに言ってるけど引っ越し前にこんなの普通買わないよ
「人をダメにするらしいよ」
「…これはダメになるね」
「やべーよな。俺もさっき座ってびびった」
ぎゅっと沈む感覚が心地いい。座椅子に座る私に体重を預ける樹。
「Aが俺の座椅子使ってるから代わりな」
「じゃああんたが使いなよ」
「あ、ゲームしなきゃじゃん!」
コントローラーを雑に手渡されパーティゲームが始まった。ゲームの弱い私は馬鹿にするみたいに笑われてぼろ負けするのがいつものオチ
「……くっそよえーわ」
「仕方ないじゃん!悔しいからもう1回同じやつ!」
「何回やっても同じじゃね?」
「うっざ!強い酒のまなきゃむりだ。これ」
「いつものアル中御用達の酒あるけど?」
ゲームに負けていじける私に冷蔵庫から持ってきたいつものお酒を手渡す
「今日はいいの」
「ふーん。」
「樹手抜いてない?舐めプやめて」
「いや、舐めプさせんな」
そんな風に軽口を叩きあって、安い缶チューハイを飲んで。本当にいつも通り。コントローラーをテーブルに置いて「樹とはもうゲームしないわ」って私がいじけんのも、何回目かわからない。
コントローラーを置いたその手を樹が優しく握った。壊れ物でも扱うみたいに優しく。
「……なに?」
「俺ね、どうしようもない奴だけどすげー誇れることあんの」
「急になに。…顔?」
「いや、顔もいいけどさ!…あの時以来嘘ついてねーの。Aには。」
あの時、って初めて自分から樹に会いに行った日のこと?記憶を巡らせて、思い出すのはあの子のヒールを鳴らす音と樹の甘い移り香。嫌な記憶、だ
「……へえ。」
「女の子と遊ぶのも、嘘つかないで言ってるじゃん?他の子にはむしろ嘘しか言ってないかもな」
「くず自慢じゃん」
ケラケラと笑う樹、私は全然笑えない。取り繕う必要が無いとかそういうの?嬉しいけど嬉しくない…自分でいったんだけどさ
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かん(プロフ) - はじめまして。クズでもどこかきゅんきゅんしまくりでした笑 (2022年3月25日 15時) (レス) id: 08214fe36c (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - mi.さん» 返信が遅くなってすみません!そう言っていただけて嬉しいです(;_;)!嬉しいお言葉ありがとうございました! (2022年3月11日 13時) (レス) id: d8cb6056f0 (このIDを非表示/違反報告)
mi.(プロフ) - まめこさんのお話すっごく面白いです…!何度も読み返していたので、49話読み終えて涙が止まりません(;;)最後までお話楽しみにしてます。 (2022年3月2日 23時) (レス) @page49 id: f783054b71 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - 甘さ控えめ太郎さん» はじめまして!私もcaramel読ませていただいております…!リアルな大学生感と切ない関係性、たまらなく大好きです🥺私も酔っ払った🐻さんに呼び出されたい人生でした… (2022年2月5日 7時) (レス) id: 08ec96d6c5 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - Nappyさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます🙇♀️励みになります…!完結までお付き合いいただけたら有難いです…! (2022年2月5日 7時) (レス) id: 08ec96d6c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2021年11月29日 1時