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自覚してからは早かった。誰かとの約束が無くなった時、真夜中の暇な時、どんな時にメッセージを送るのかは樹にしか分からないけど。多分そんな感じ。私個人、ではなくフットワークの軽い友人として私は適切だったんだろう。頻繁に『ひまでしょ?』なんて決めつけたメッセージがくるようになった。
「きたー」
「おつかれ、飲む?」
パッケージもアルコールの度数も可愛いそれは、他の女の子の為に買ったもの。共有するのが嫌で「甘いお酒嫌い」なんて嘘をついた。
「ならコンビニいこ」
「あ、肉まんも買お!」
「肉まんみてーな顔になるぞ」
「最悪だね、ほんとに!」
深夜、浮ついた気持ちを声にのせないように2人でコンビニを目指す。深夜、誰もいない街灯の下を2人だけで歩くこの時間はすき。忙しなく通知を知らせるスマホも、わざとらしく残っている女の子の痕跡もみないふりできるから。
「ねー、樹」
「なに、てかお前さ。さむくねーの」
「よくわかったね。寒い、もう冬きてる説ある…」
「馬鹿じゃねーの」
口ではそう言いながら着ていたシャツを私に羽織らせてくれる。ふわりと香る甘い香水の匂いは、簡単に私の気持ちを舞い上がらせる。
「たばこくさ」
「うわ、返せよ」
「やだ。寒いし。」
わざとぶつけられた肩、繋がれる手。前と違って自分から離そうとは思わない。樹、知ってる?友達って手を繋いだりしないんだよ。そう言ったらきっとこの手の温もりは簡単に離れていくんだ。
「……冬になったら鍋パしたくない?」
「Aがつくんの?」
うえー、って大袈裟に笑う樹。繋いだ手に力を込めれば「冗談だよ」なんて優しく笑った。
「タコパもしたい!あ、ゲーム夜通しやったりとか。それに、…なんだろ。雪合戦とか」
「小学生みたいな願望じゃね?絶対やんない、雪合戦とか。」
てか降んねーだろなんて、夢のないやつ。実現しない約束はあんまり好きじゃない、でもこれは願掛けみたいなもので。
「冬は忙しいかもなー。モテる男はつらいわ」
「……刺されてしまえ」
「クリスマスに年越しに、バレンタインとか?それにほら、寒いとさ」
寂しくなんね?って。この手も寂しさを埋めるためものなんだ。暖かかった右手が途端に冷めていく、特別なんてものに私がなれるわけないのに。
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かん(プロフ) - はじめまして。クズでもどこかきゅんきゅんしまくりでした笑 (2022年3月25日 15時) (レス) id: 08214fe36c (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - mi.さん» 返信が遅くなってすみません!そう言っていただけて嬉しいです(;_;)!嬉しいお言葉ありがとうございました! (2022年3月11日 13時) (レス) id: d8cb6056f0 (このIDを非表示/違反報告)
mi.(プロフ) - まめこさんのお話すっごく面白いです…!何度も読み返していたので、49話読み終えて涙が止まりません(;;)最後までお話楽しみにしてます。 (2022年3月2日 23時) (レス) @page49 id: f783054b71 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - 甘さ控えめ太郎さん» はじめまして!私もcaramel読ませていただいております…!リアルな大学生感と切ない関係性、たまらなく大好きです🥺私も酔っ払った🐻さんに呼び出されたい人生でした… (2022年2月5日 7時) (レス) id: 08ec96d6c5 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ(プロフ) - Nappyさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます🙇♀️励みになります…!完結までお付き合いいただけたら有難いです…! (2022年2月5日 7時) (レス) id: 08ec96d6c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2021年11月29日 1時