憂鬱な夜

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「いって。」

「……ナイピ！」


投げ返してくる樹とケラケラ笑って。それからこいつのことをちゃんと信じて好きって純粋に思える子達が羨ましい。って思った。私もどうせならそっち側が良かった。好きなくせに変にひねくれて、歪んだこの気持ちはもうどうしようもなく修復されないのだから。



「Aー、これみて。ぐろくね？」

「うっわ。吐くって。…こんなの女の子に見せるのじゃないよ」

「女の子って、Aでしょ(笑)うっわー。えぐすぎる。」

サブスクリプションのB級ホラーを嬉々として人に見せ、「1人じゃみれないから呼んだの」とかいう樹。…先週は確か人生ゲーム。その前は桃鉄だった。






「しんたろとか呼びなよ…」

「こういうのは女の子とイチャイチャしながら見るのがいいんだろ」

「…あっそ」

「ほら、こっち来て」

ベッドの上で寝転がる樹に手を引かれ、抱きかかえられるように隣に寝かされる。これじゃ映画みれないじゃん

「……映画みえない」

「あんなくそキモイ映画みてーの？」

「アンタがつけたくせに…」

ふ、って鼻で笑って頭を撫でられる。いつも最後はこのベッドで隣に寝かせられてダラダラして終わる。…アルコールのせいで眠いのに。


「じゅり、めっちゃ眠いから帰るよ」

「……泊まればよくね？」

「……枕変わると寝れないし」


またね、ってコートと鞄を持って早急に帰る用意。滞在時間はいつも2.3時間。抱きしめたり、肩を寄せあったりするのに。キスも、それ以上のことはないまま。私たちは危うい綱渡りみたいなものをしている。きっと一線を超えてしまったら友達にも彼女にも、何者にも戻れないのを察しているから


「電話繋げといて…喋んなくていいから」

「そういうキャラじゃないでしょ(笑)毎回やめて、笑わせんの」

「……俺ん家から帰ってる時になんかあったら寝覚め悪いでしょ(笑)だから頼むわ」


そう言って私のスマホと樹のスマホは私が家に帰るまで繋がってる。たまに、「生きてる？」って声がスマホから聞こえて「おかげさまで」って返すのが日課だった。よくわからない関係、何度もおもった。今日で最後にしよう、って。


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「昨日バイト終わりなにしてたの？」

「え…家にいたけど」

「まーた樹ん家なわけね。」


呆れた顔の北斗。わかってるなら聞かなきゃいいのに。なんてひねくれた考えを見通したように「Aのためになんないだろ、そんなの」って至極まともなことを言われた。







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