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ぎゅーっと背中にまわる腕の力が強くなる。さっきとはまぎゃくだ。行きたくない、っていう私と行かせないっていうジェシー。
優しく背中を撫でられながら。
「Aちゃんはいい子ー。頑張り屋さん。」
小さい子に言い聞かせるみたいに抱きしめてくれる。甘くて溶けるような時間。出社前の憂鬱な時間とは思えない。
「……私、がんばってる？」
「うん。俺が心配になるくらい頑張ってるよ」
「……その頑張りが空回りしてるって言われちゃった」
「それはね、頑張ってるね。少し肩の力を抜いてってことだよ。悪い意味じゃないよ」
「…そんなふうに思えない」
「思えばいいの。Aちゃんのこと心配してるんだよ、その人も」
「………じぇす、ポジティブすぎるよ、」
「ポジティブすぎるくらいでいいんだって。会社行きたくないならこのままでいよーっと。」
俺もうれしーし、って心底嬉しそうに見下ろされた。愛おしそうに頬を撫でられて擽ったさに身をよじる。
「頑張っていく、」
我ながら単純だと思う。時計の針は着実に動いていて、本当にもう出なければ遅刻してしまう。見あげてそう呟けば、また困った顔のジェシーと目が合った。
「…んー。本当に俺が行かせたくなくなっちゃったからもう少しこのまま。ね？」
肩口にぐりぐりと頭を押し付けて、甘えた声で囁く。…ずるい。やっと行く気になったのに。
「ねー、ご褒美ちょうだい」
「…逆じゃないの？」
「違うよ。もう俺が行きたくなくなっちゃったから。俺も頑張っていくの。」
すごい理由だなってなんか笑えてくる。了承すると直ぐに離れる体。大袈裟なくらいに喜んでいるジェシー。
「お肉が美味しいとこあんの。そこ行こ！」
「ジェシーへのご褒美に？」
「うん。俺と、Aちゃんのお仕事頑張ったご褒美ね」
駅まで一緒に行こ、優しい声色と眼差しがたまらなく愛おしい。
「ふふー、なんか気分上がってきた」
「わたしも」
「おー。いいね、[FN:名前]ちゃんのお顔がさっきより可愛くなってる」
「…終わったらご褒美待ってるから」
「うん、俺もー。」
独特な笑い声がすぐ近くでする。それだけで幸せな気持ちになる。つられて笑うと、嬉しそうな彼氏と目が合った。
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作者名：まめこ
| 作成日時：2022年9月17日 0時
