▽追うはかげろう ページ8
暇つぶし道具といえば本だった。昔から。それは俺の家が本ばっか、それも古い詩集とか歌集ばかりがあって、たまにある小説も本来は詩歌が専門の詩歌人が書いたやつ、みたいな環境だったから仕方ないことだったと思う。スマホを手に入れたのも遅くて、結局ならい性で今も暇になったらとりあえず本を手に取るのが習慣になっている。
『お前萩原朔太郎好きなのか』
新学期がはじまったばかりのファースト・コンタクトで、俺はグルッペンに勢いこんでそうたずねた。なにしろ彼は名のある詩人の中でもそれなりに特別な存在だ。両親のお気に入りで、俺の名前の由来で、俺だって詩人の中で好きなのをひとり挙げろといわれたら、たぶん彼が出てくる。そういう存在の本を、こいつは持っていたのだ。
「そういうの読むタイプにはみえんけど。お前」
『誰にもいったことはない。そういうの読むってことは。どうせみんなわかんねーし。そういうタイプと日頃つるまねーし』
「ふうん。無理してるのか？」
『いや。別に無理はしてない。暗くてなにしゃべってるかわかんねーようなやつとはどうせ話合わねえし、好きな本の話なんかできなくたって支障はない』
「お前はこの詩人が好きなんだな」
グルッペンはそういって笑った。俺がそれをたずねていたはずなのに、いつのまにか立場が逆になっている。
『お前が好きなんだろ』
「お前も好きなんだろ」
『……そりゃ、好きだけど』
「お前のそういう一面を知ってるのは、俺だけか？」
『は？』
「俺だけなんだろ」
グルッペンはそういって俺をみつめた。薄く笑ったままの顔で。ていねいに細められたピジョン・ブラッドの両目が、俺だけをみている。窓からさしこむ何条かの光のひとつがその宝石を照らして、うらさびしい教室のすみっこの席にはまるで似つかわしくない豪奢な輝きが場を照らす。最高級のルビーの輝きが、俺を照らし出す。
そうだお前だけだ。俺のこんな趣味を知っているのなんか、お前だけ。
『……誰にいったってわかんねーよ、詩人なんか』
「そりゃそうだろうな」
『なんでお前はそんなん読んでんだ』
「趣味だからだ」
『変なやつ』
「お前にいわれたくないな。いかついやつらと普段つるんでるくせに、詩集なんか読んでる変なやつに」
『うるせーよ』
「だが俺はうれしいぞ」
『……は？』
「お前みたいなやつと友だちになれて」
『…………』
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暁 - こんにちは！好みドストライクの小説に死にました笑笑 よろしければ、番外編など書いていただけると、今後の楽しみになります← (2019年6月26日 17時) (
レス) id: 49acb176a2 (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - カロさん» リクエストありがとうございます！無事書けましたのでお知らせいたします。夢主気に入っていただけたみたいでうれしいです；！書いててすごく楽しいのでありがたいリクエストでした！読んでくださってありがとうございました！ (2019年6月22日 8時) (レス) id: 5ef018c5f9 (このIDを非表示/違反報告)
カロ(プロフ) - すみません！リクエストで夢主くんとグルさんのイチャイチャが見たいです！お願いします！ (2019年6月21日 18時) (レス) id: d6860b933c (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - bhさん» わーいありがとうございます；；ほんと私の好きなもの無造作につめこんだだけの作品にそういっていただけでうれしいです！完結したのでお楽しみいただければいいな…と思います！ありがとうございます！ (2019年6月20日 21時) (レス) id: cfc1eef8b5 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです…ド性癖です…応援しております… (2019年6月19日 15時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エス | 作成日時：2019年6月18日 0時
