▽ ページ32
「“俺のお母さん”は、ずっとそうやって忌まれてきた」
『…………』
「ねえさんもや。特徴は継がなかったが、血は間違いなく継いでいる。ここは旧い家やからな、縁起の悪い女の血だとかいって、めちゃくちゃいうやつの多いこと」
『…………』
「グルッペンもや。やからこの家には、親族なんかほとんど集まらない」
『……そんな』
「お前にはまだわからんやろう」
大先生はそういって、俺にずいと顔を近づけてきた。とっさのことだったので、俺もろくに反応できず、大先生が威嚇するように俺をみてくるのを、なすすべなく受けとめるしかない。
「自らの血を忌みながら、もがくように愛にすがって生きる女の生きざまが。お前にはわからんやろう。グルッペンにもや。あいつは守られて生きてきた。自分の祖母より、母よりも、ずっと」
『……守られて……』
「俺はそういう女が好きや。不幸で、もはや愛しかないような女が。だがグルッペンはそうじゃない。……お前や、コネシマや、トントンや……多くの人間が、グルッペンをそうさせなかった」
『…………』
「自分の愛に、ちゃんと責任を持てよ。一度愛したからには、それを裏切るな。それが救いであったということを、なによりもお前が自覚しろ」
『…………っ』
……たまらなかった。
俺はただ、自分の欲求や好奇心によって動いていただけだ。あいつのことがきれいで、あいつの強さや賢さに惹かれて、まとわりついていただけ。あいつはそれを嫌がらず、俺をそばに置いてくれた。……それが救いだったと。俺の、無邪気で、なんの考えもない、純粋な興味が、あいつにとっては救いだったというんだろうか。
「……トントンがあいつを好きだっていうたよな」
『！』
大先生はそういって、庭に建つ庵を指さした。トントンとグルッペンが、話をしている場所だ。……なんの話をしているのかはわからない。……それを、確かめないといけないような気がした。俺はあいつを、逃してはいけないような気がしたのだ。
「自分の好きなやつが、暗所で男とふたりになるのが耐えられないのは当たり前や」
『……っ、感謝する！』
「俺はなんもしてへんけどね」
俺はひとことそうとだけいって、庵に走った。走れば庵まで、一分足らずで到着できる。靴を履くのも忘れて、庵の入り口に駆けこんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 243人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
暁 - こんにちは！好みドストライクの小説に死にました笑笑 よろしければ、番外編など書いていただけると、今後の楽しみになります← (2019年6月26日 17時) (
レス) id: 49acb176a2 (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - カロさん» リクエストありがとうございます！無事書けましたのでお知らせいたします。夢主気に入っていただけたみたいでうれしいです；！書いててすごく楽しいのでありがたいリクエストでした！読んでくださってありがとうございました！ (2019年6月22日 8時) (レス) id: 5ef018c5f9 (このIDを非表示/違反報告)
カロ(プロフ) - すみません！リクエストで夢主くんとグルさんのイチャイチャが見たいです！お願いします！ (2019年6月21日 18時) (レス) id: d6860b933c (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - bhさん» わーいありがとうございます；；ほんと私の好きなもの無造作につめこんだだけの作品にそういっていただけでうれしいです！完結したのでお楽しみいただければいいな…と思います！ありがとうございます！ (2019年6月20日 21時) (レス) id: cfc1eef8b5 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです…ド性癖です…応援しております… (2019年6月19日 15時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エス | 作成日時：2019年6月18日 0時
