▽ ページ26
だが大先生はそんなアウェー感をものともせず、先陣きって受けつけを済ませ、俺たちを席まで案内してしまった。
「はい。好きなもんとっておいで」
『俺、金なんてないけど』
「こいつに持たせればいい。そのつもりで連れてきたんだ。さっさととりにいこう」
『ぐ、グルッペン！』
グルッペンが急かすように俺の腕を引いてスイーツのところまで連れていこうとするので、俺はなされるがままトレイを受け取ってラインナップの前に並んでいた。大先生はひとりで留守番だ。
『こんなとこ連れてきて、あいつどういうつもりだ』
「俺の機嫌をとるつもりでいるんだろう」
『どういうことだ？』
「……ここは俺が好きだから」
『あ、そう……』
なんだ、スイーツが好きなんて意外だな。思わぬ発見に俺がとたんに機嫌をよくしてグルッペンをじろじろみながらにやついていると、さすがに照れくさくなったらしいグルッペンが肘鉄をおみまいしてきた。無防備に受けるとあわやトレイの上のスイーツが大惨事になるので、すんでのところで避ける。
『照れることないだろ。俺だって甘いもん好きだぜ』
「お前今俺のことからかう気だっただろ」
『いやそんなことないって。こんなとこ来慣れてるなんて、さすがお坊っちゃんだなと思っただけで』
「…………」
俺がそういったとたん、グルッペンは唐突に黙りこんでしまう。……地雷を踏んだだろうか？ お坊っちゃんいじりは、もしかすると気に入らないのかもしれない。
「母が」
『は……、お母さん？』
「母が。好きだったんだよ。それで昔から、なにかあると連れて来られていた。それにはあいつも一緒だったから」
『……大先生が？』
「そうだ」
グルッペンはそういって、ディスプレイからいちごのタルトを選びとった。つづけざまにモンブラン、ティラミスとぞくぞくトレイに載せていく。そんなにとって食べきれるのか心配になるところだが、何度も来ているということだから、自分の限界はよくわかっているはずだ。俺はそんなには食べられないので、ミルクレープとチョコショートをとってとりあえず終いにする。
『……お前の母ちゃんとあいつ、どういう仲なんだよ』
こんな質問をするのは不躾がすぎるかとも思ったが、今さらとがめられもしないだろうとみこんで、俺はそうたずねる。グルッペンは一瞬だけ、迷うように目を伏せた。
「……愛人だ」
……それだけいって、席に戻っていく背中を、俺はしばらく呆然とみていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 243人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
暁 - こんにちは！好みドストライクの小説に死にました笑笑 よろしければ、番外編など書いていただけると、今後の楽しみになります← (2019年6月26日 17時) (
レス) id: 49acb176a2 (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - カロさん» リクエストありがとうございます！無事書けましたのでお知らせいたします。夢主気に入っていただけたみたいでうれしいです；！書いててすごく楽しいのでありがたいリクエストでした！読んでくださってありがとうございました！ (2019年6月22日 8時) (レス) id: 5ef018c5f9 (このIDを非表示/違反報告)
カロ(プロフ) - すみません！リクエストで夢主くんとグルさんのイチャイチャが見たいです！お願いします！ (2019年6月21日 18時) (レス) id: d6860b933c (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - bhさん» わーいありがとうございます；；ほんと私の好きなもの無造作につめこんだだけの作品にそういっていただけでうれしいです！完結したのでお楽しみいただければいいな…と思います！ありがとうございます！ (2019年6月20日 21時) (レス) id: cfc1eef8b5 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです…ド性癖です…応援しております… (2019年6月19日 15時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エス | 作成日時：2019年6月18日 0時
