▽雨の先遣 ページ18
勢いで足を踏み入れた庵の中は、抹茶と菓子のにおいで満ちていた。道具を片づける寸前だったらしく、茶杓や茶筅がまとめて置かれているのがみえた。
「……A」
『…………』
「菓子を出すといったろう。我慢できなかったのか」
『……ああそうだよ。我慢できなかったんだ！』
俺がやけっぱちでそういうと、グルッペンは虚を突かれたらしく、目をまんまるにみひらいてから、薄く笑った。ひそやかで、まるでなにかをあきらめたみたいな顔にみえた。
グルッペンの指図を待たずして、俺が適当にそのへんの座布団に座りこんでしまうと、グルッペンは「ああ、違う違う」といって、上座にある座布団を指し示した。
「お前は
意味はよくわからなかったが、この席が一番上等な席だということはわかる。俺は少し緊張しながらその席に座った。グルッペンは片づけようとしていた道具をふたたび展開して、整えはじめた。
『……グルッペン？』
「少しだけ」
そうつぶやいて、俺をみる。うかがうように、ねだるように。
……弱気な瞳だ。グルッペンのそんなようすを、俺はみたことがない。暗い庵の中で、いつもと違って弱々しいグルッペンの両目が、かすかに光ってみえる。
「半東がいないが、……たったひとりの客だ。問題あるまい」
『な、……なんだよ。俺はお前の誘いを断った無礼者だぞ』
「そんなふうに、自分を卑下しなくていい。俺の誘いが非常識だったんだ。お前は素人なのに」
グルッペンは持ち場から離れて、おそらく実際の茶会で用いたのだろう、茶菓を出してきた。目の前に差し出された菓子を、俺はどう扱えばいいのかわからず、しばらく右往左往する。そんな俺のようすをみて、グルッペンはまた小さく笑った。
「作法など気にしなくていい。手でつかむなり、箱を持ち上げるなりしていいんだ」
……俺は茶のことなどなにも知らない。そのまま奮闘していたところでにっちもさっちもいかないのはわかりきっていたので、グルッペンにいわれたとおりに、菓子を手でつかんでそのまま口に運ぶ。……こういうやり方が無作法であろうことは、俺にもわかる。でもグルッペンは、それを許容するといった。
グルッペンは釜の前に座りなおして、そのまま茶を立てはじめた。人が茶を立てるところをみるのははじめてだったので、ついみいってしまう。なにをしているのかはよくわからないものの、そのしぐさは流れるようにていねいで、美しい。
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暁 - こんにちは！好みドストライクの小説に死にました笑笑 よろしければ、番外編など書いていただけると、今後の楽しみになります← (2019年6月26日 17時) (
レス) id: 49acb176a2 (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - カロさん» リクエストありがとうございます！無事書けましたのでお知らせいたします。夢主気に入っていただけたみたいでうれしいです；！書いててすごく楽しいのでありがたいリクエストでした！読んでくださってありがとうございました！ (2019年6月22日 8時) (レス) id: 5ef018c5f9 (このIDを非表示/違反報告)
カロ(プロフ) - すみません！リクエストで夢主くんとグルさんのイチャイチャが見たいです！お願いします！ (2019年6月21日 18時) (レス) id: d6860b933c (このIDを非表示/違反報告)
エス(プロフ) - bhさん» わーいありがとうございます；；ほんと私の好きなもの無造作につめこんだだけの作品にそういっていただけでうれしいです！完結したのでお楽しみいただければいいな…と思います！ありがとうございます！ (2019年6月20日 21時) (レス) id: cfc1eef8b5 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです…ド性癖です…応援しております… (2019年6月19日 15時) (レス) id: c595f3c6d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エス | 作成日時：2019年6月18日 0時
