転生し魔王は黒き本丸へ

第参拾肆話 [] 不穏な影 ページ40

タッタッタッと、足音が聞こえる。
足取りは子供の様だ、すぐ近くにいる。

身体が浮いている様な感覚。夢の中だろうか？

クスクスと、鈴の様な可愛い声が聞こえる。
やっぱり子供の声だ、何かで遊んでいる？

ポンポンポンと、何かを付く音がする。
鞠付きだろうか？

ー遊ぼう？遊ぼう？

音が聞こえる…。何だ？身体が、勝手に前に行くような…。

ークスクス、おいでおいで

待て、ダメだ、止まれ。止まれ止まれ止まれ！
"ソレ"について行ってはいけない






「起きて、起きて貴方様。

異型よ、この御方は貴様が触れて良い方では無いぞ」





『うわぁ！！』

思わず情けない悲鳴を上げて飛び起きた。すぐ側にいた薬研も、オレの大声に

「！？何だ何だ大将！敵襲か！？」

と言って飛び起きた。

『あ、いや。すまん、違う』

「何だ…って、大将、大丈夫か？顔が真っ青だぞ？」

え？嘘、マジで？
いや、冷や汗が凄いのはすぐ分かった。それ程にあの夢に恐怖を感じたんだろう。

内容は、覚えてねーや。
でも。最後に懐かしい声が、聞こえた様な。

「大将？大丈夫か？」

『あぁ、大丈夫だ』

ダメだ、上手く取り繕えない。その証拠に薬研が酷く心配そうに見てる。
どーしよと悩んでいたら、後ろの襖がスパンと開いた。

「あ、主と薬研起きてたんだ。はいこれお茶。皆雑魚寝し始めるから大変だったよ」

行光…。そっか。宴の後、皆潰れて、結局雑魚寝したのか。
あ、今気づいたが布団が掛けてあった。起き上がった時吹っ飛ばしちまったが。

『わ、悪いな行光。オレも手伝うぜ』

「大丈夫だよ、燭台切さんと一緒にお昼作ったから」

『お昼！？今何時だ！』

「大変だぜ1時だ」

完璧に寝坊です。




『あ"ー頭痛え。書類が終わんねぇ、仕事嫌だ』

「はいはい、主も大変だね。はい鳥粥」

『サンキュー光忠』

鳥の旨味が粥に染みてて美味い。
そして無情にもオレの向かいの席にいる薬研は味わう前にポン酢をドバドバ粥に入れてる。塩っぱそう。

「あ！おい薬研！何入れてんだよ！」

「ポン酢」

「見りゃわかる！！何でポン酢！？しかも大量！」

「ポン酢美味いだろ！？大抵の物には合うぞ！」

「だからってな！せめて一口味わってから入れろ！」

「なんだよ！不動だって塩バンバン入れるだろ！？」

「適量を入れてんだよ！」

平和だなー。




ークスクス



この雑音が聴こえなければ…。もっと平和だ。
一体何なのか…見られている？何に？


ークスクス


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