09 竜胆side ページ10
「兄貴、今日飯いらねえ。」
「え、どっか行くの?」
「Aの家行く。」
今日は、金曜日。珍しく土曜に休みを貰えた為、そのままAの家に行くつもりだ。
別に逐一兄貴に報告しなくても良いんだけど、長年の習慣とは怖いものだ。気づけば、兄貴に言っている事が多い。
すると、兄貴はきょとんとした表情を浮かべて言葉を繋げる。
「A、合コン行くって聞いてねえの?」
「は?」
「あ、やべ。聞いてなかったのかよ。」
まずい、と言わんばかりの兄貴に微かな苛立ちを覚えた。つか、Aは兄貴には報告するくせに、俺には何にも言わねえって意味わかんねえ。
……そんなに俺にはプライベートの事を知られたくねえのかよ。
「何処でやるとか聞いてる?」
「そこまでは知らねえ。……なあ、竜胆。」
いつもおチャラけている雰囲気を醸し出す兄貴が、本気トーンで俺に言葉をぶつけた。
「殺気立ってるトコ悪いけど。Aは竜胆の所有物じゃねえ。Aが何をしようとお前が怒るのはお門違い。」
そんなの、分かってる。分かってるから、言われたくない事だってある。それが、兄貴だからこそ言われたくない事だって。
どんな蹴りよりも拳よりも突き刺さって痛い言葉。間違ってないからこそ、強く反発も出来ないで押し黙ってしまうだけ。
「それに、好きな女が幸せ掴みに行こうとして何が悪いんだよ。好きの言葉も言えねえなら黙ってAの幸せだけ考えてろ。」
……それは、その通りだ。俺がずっと臆病になってAに「好き」の言葉を伝えられていないだけ。
この滞りは俺自身の問題でAの問題じゃない。俺だって、12年前からずっとAの事だけを想ってきている。
中途半端なそこら辺の男と同じ様な軽々しい想いだと思われるのは心外だ。
「……俺、Aんトコ行ってくるわ。」
兄貴から背を向けてAの所へ行く。合コンの場所もAの居場所も行方知れずだけど、行き当たりばったりだとしても、Aを探し出して、他の男からかっさらってやる。
とりあえず、Aの働いているデパート付近の居酒屋を探すことにする。
男を知らないAが、俺の知らない所でヤリ捨てされるなんて御免だし、パッと出の男に奪われるくらいなら、俺が奪いたい。
何よりも、Aに容易く触れる男がいるなんて考えるだけでも腹が立つ。
……絶対に、Aを連れて帰る。
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うさ - めちゃくちゃ好きすぎます… (3月31日 19時) (レス) @page50 id: 4170d6f2b7 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - めちゃめちゃいいお話しでした!(蘭ちゃん流石。。。男前すぎん?惚れるわ) (1月1日 11時) (レス) @page50 id: 612ac16389 (このIDを非表示/違反報告)
可月(プロフ) - 竜胆最高 (12月27日 7時) (レス) @page50 id: fed16d8c1b (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - サバさん» ありがとうございます🥹💖 (2022年4月4日 7時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
サバ(プロフ) - さきなさん» これからも応援してます🥰 (2022年4月4日 3時) (レス) id: b9a6851691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2022年3月21日 1時