30 竜胆side ページ31
Aの家に着き、いつものように合鍵で部屋へと入る。
部屋の奥へ進むと、何やら浮かない顔のA。折角買ってきたのに、そんな顔されたらどうしたのか気になって仕方がない。
「どうしたんだよ。」
尋ねてみると、焦ったような顔をして「なんでもない」と言い張るA。
何処か様子がおかしい。……その理由がすぐに分かった。部屋の隅に置かれている俺が買ってきたブランドと同じ紙袋。
誰かから同じものを貰ったのだろう。
俺の目線で気づいたのが分かったらしく、バツが悪そうに「ごめんね」と謝ってきた。
「……これ、要らねえか。」
ガラスの靴は1つで充分だ。御伽噺のシンデレラだって、ガラスの靴を落としたのは片方だけ。片方あれば、物語は成り立つ。
……だから、俺のは必要ねえな。なんて、勝手に思ってしまう。
紙袋をぎゅっと握りしめ、Aから背を向けて帰ろうと玄関へと向かう。
まるで、シンデレラを見つけ出せなかった王子みたいな敗北の気分。……まあ、俺は王子様なんていう柄じゃねえんだけど。
「待って、竜胆……!」
俺の手を握り、動きを止めるA。別に、気を遣う必要なんて何も無いのに。
「竜胆の買ってくれた香水、頂戴。」
「2つも要らねえだろ。」
Aの顔を見ないまま、返事をすると、返ってきた次の言葉が微かに震えていたような気がして、振り返った。
「要らなくない。竜胆が買ってくれたのだから、欲しいの。」
震える声に顔を上げるとAは今にも泣き出しそうだった。そんな、泣きそうな顔で言うんじゃねえよ。……思わず、抱きしめたくなってしまうから。
それに俺は、Aにそんな顔して欲しい訳じゃない。
「……わかった、ほら。」
「ありがと、竜胆。」
可愛らしい笑顔を俺に向けて、嬉しそうに紙袋を見つめていた。そのくらい、欲しいものだったんだなと、思った。
ていうか……Aに香水をあげた奴、誰だよ。香水を贈る意味くらい、いい歳の野郎なら知ってんだろ。……香水を贈るのは独占欲の表れって事くらい。
そいつ、確信犯だったら腹立つな。
それに加えて、俺はリップもAに買ったんだけど。付き合ってない女にリップをプレゼントするのは、告白の意味が込められている。
……まぁ、Aは知らなさそうだけど。
「中、開けてみろよ。」
「今開けていいの?」
「いいよ。……部屋、戻るか。」
「……うん!」
再び部屋の奥に戻る俺たち。早く、Aの反応が見たい。
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うさ - めちゃくちゃ好きすぎます… (3月31日 19時) (レス) @page50 id: 4170d6f2b7 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - めちゃめちゃいいお話しでした!(蘭ちゃん流石。。。男前すぎん?惚れるわ) (1月1日 11時) (レス) @page50 id: 612ac16389 (このIDを非表示/違反報告)
可月(プロフ) - 竜胆最高 (12月27日 7時) (レス) @page50 id: fed16d8c1b (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - サバさん» ありがとうございます🥹💖 (2022年4月4日 7時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
サバ(プロフ) - さきなさん» これからも応援してます🥰 (2022年4月4日 3時) (レス) id: b9a6851691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2022年3月21日 1時