検索窓
今日:11 hit、昨日:33 hit、合計:100,935 hit

30 竜胆side ページ31

Aの家に着き、いつものように合鍵で部屋へと入る。

部屋の奥へ進むと、何やら浮かない顔のA。折角買ってきたのに、そんな顔されたらどうしたのか気になって仕方がない。

「どうしたんだよ。」

尋ねてみると、焦ったような顔をして「なんでもない」と言い張るA。

何処か様子がおかしい。……その理由がすぐに分かった。部屋の隅に置かれている俺が買ってきたブランドと同じ紙袋。

誰かから同じものを貰ったのだろう。

俺の目線で気づいたのが分かったらしく、バツが悪そうに「ごめんね」と謝ってきた。

「……これ、要らねえか。」

ガラスの靴は1つで充分だ。御伽噺のシンデレラだって、ガラスの靴を落としたのは片方だけ。片方あれば、物語は成り立つ。

……だから、俺のは必要ねえな。なんて、勝手に思ってしまう。

紙袋をぎゅっと握りしめ、Aから背を向けて帰ろうと玄関へと向かう。

まるで、シンデレラを見つけ出せなかった王子みたいな敗北の気分。……まあ、俺は王子様なんていう柄じゃねえんだけど。

「待って、竜胆……!」

俺の手を握り、動きを止めるA。別に、気を遣う必要なんて何も無いのに。

「竜胆の買ってくれた香水、頂戴。」

「2つも要らねえだろ。」

Aの顔を見ないまま、返事をすると、返ってきた次の言葉が微かに震えていたような気がして、振り返った。

「要らなくない。竜胆が買ってくれたのだから、欲しいの。」

震える声に顔を上げるとAは今にも泣き出しそうだった。そんな、泣きそうな顔で言うんじゃねえよ。……思わず、抱きしめたくなってしまうから。

それに俺は、Aにそんな顔して欲しい訳じゃない。

「……わかった、ほら。」

「ありがと、竜胆。」

可愛らしい笑顔を俺に向けて、嬉しそうに紙袋を見つめていた。そのくらい、欲しいものだったんだなと、思った。

ていうか……Aに香水をあげた奴、誰だよ。香水を贈る意味くらい、いい歳の野郎なら知ってんだろ。……香水を贈るのは独占欲の表れって事くらい。

そいつ、確信犯だったら腹立つな。

それに加えて、俺はリップもAに買ったんだけど。付き合ってない女にリップをプレゼントするのは、告白の意味が込められている。

……まぁ、Aは知らなさそうだけど。

「中、開けてみろよ。」

「今開けていいの?」

「いいよ。……部屋、戻るか。」

「……うん!」

再び部屋の奥に戻る俺たち。早く、Aの反応が見たい。

31→←29



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (253 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
497人がお気に入り
設定タグ:東京リベンジャーズ , 灰谷竜胆 , 梵天   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

うさ - めちゃくちゃ好きすぎます… (3月31日 19時) (レス) @page50 id: 4170d6f2b7 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - めちゃめちゃいいお話しでした!(蘭ちゃん流石。。。男前すぎん?惚れるわ) (1月1日 11時) (レス) @page50 id: 612ac16389 (このIDを非表示/違反報告)
可月(プロフ) - 竜胆最高 (12月27日 7時) (レス) @page50 id: fed16d8c1b (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - サバさん» ありがとうございます🥹💖 (2022年4月4日 7時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
サバ(プロフ) - さきなさん» これからも応援してます🥰 (2022年4月4日 3時) (レス) id: b9a6851691 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:さきな。 | 作成日時:2022年3月21日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。