タバコ越しにキスをして、【灰谷竜胆】 (ページ19)

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楽しそうな会話が聞こえるカフェ内で、蘭くんの声だけが妙に響いて聞こえた。

笑い飛ばしている彼を見て、やっぱり冗談なのかと安堵する私。

「びっくりした、蘭くん演技上手すぎない？俳優もいけるかも。」

つられるように笑い飛ばしてみると、蘭くんの表情が再び先程の冷たい視線に戻っていた。

私に対しては穏やかで甘やかしてばかりの蘭くんの見たことの無い表情に動揺する。正直、蘭くんのこんな顔を見たことがない事もあり、煽られていく恐怖心。

「さっきの言葉、嘘じゃねえから。」

「え……？」

「俺、ちゃんと言ったからもう言わね〜。」

どれに対して、蘭くんが言っているのかイマイチ理解が出来ていない。

たけど、それに対して聞くのも末恐ろしい気もして。

「蘭ちゃんの慰め会も終わったし、そろそろ帰るか〜。」

ニコリ、と笑みを浮かべた蘭くんはその後はいつも通りの優しい蘭くんで。

竜胆の事、何考えているのか分からないと思っていたけれど、蘭くんは蘭くんで心の奥底が見えてこなくて何を考えているのか分からない。

私に見せてこなかった一面を垣間見せてきた蘭くんを、私はどう反応するのが正しかったのだろう。

蘭side
Aがあからさまに動揺していて超可愛い。俺の言葉で悩んで、考えてればいいよ。

竜胆への気持ちがそれで消えるなら、結局12年の年数なんてちっぽけなその程度のモンだったって事だろ。

竜胆もAも、ホンットに焦れったい。

俺は俺で、自分のやりたいようにやらせてもらうつもりだから暫くはAも竜胆も俺の言葉に戸惑って惑わされていればいい。

「何に」対して、俺が本当のことをAに言ったのかなんて、正解は俺以外知らないし。

「蘭くん、ありがとう。またね。」

小さく手を振って可愛らしく笑うAにふりふりと軽く手を揺らして別れる。

俺の態度に振り回されて、戸惑っていただろうに、気遣ったのか平然を装っていたA。

……拗らせるなら、とことん拗れたらいいよ。見てるこっちは高みの見物させてもらうだけだし、奪えるモノは俺の手に取るし。

スマホが震え、手に取ると可愛らしい猫なで声で俺を誘う女。

「蘭くん！今日は空いてる？」

「ん〜、悪いけど今日は空いてねえわ。」

素っ気なく返事をして、スマホを切った。女を抱くよりも面白くてスリルのある事が近くにあるんだから。

暫くはそれで飽きねえな。