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褒められると思っていなかったせいで、心の準備が全く出来ていなかった私。
ドクドクと煩く脈を打っている鼓動を抑えるのに精一杯だ。
「……ここはスカスカだけど。」
トントン、と竜胆は長い指先で自分の胸板をつつくような仕草をする。
どうやら私の胸が貧相だと言いたいようだ。
「失礼じゃない?」
ムッとして見せると、竜胆が子供っぽい笑みを浮かべていた。……普段から、こんな風に2人でちゃんと話せたら良いのに。
「でも、やっぱり……こういうのじゃなくて。Aには可愛い感じの服の方が似合ってんな。」
調子を狂わされてしまう。こんな、言い方今までしてくれたことなかったじゃない。素っ気なかったくせに、急に優しくされると混乱してしまう。竜胆は、何を思っているの?
……私に、どんな感情を抱いているの?
「……着替えてくる。」
彼から背を向けると、動きを止められるように肩に手を置かれて力を加えられる。
身動きが取れずに止まっていると、無防備に空いた背中に生温かい感触。
「ひっ……!?竜胆何してんの!?」
「何って、えろいなぁって思って。」
「だからって舐めっ……!」
「は、顔真っ赤。超ウケる。」
やっぱり私の事をからかってバカにしてる節がある。そんな彼のことを無視して私は再び奥の部屋へと消えていった。
平常心を装っていたけれど、内心はバクバクで。竜胆が何を考えているのか全くわからなくて戸惑っていた。
私の気持ち知りもしないで。玩具で遊ぶ無邪気な子供のように私を手のひらで転がして弄んでいるんだ。
着替え終わって戻ってくると、竜胆はいつものようにタバコを吸っていた。苦い匂いが部屋に広がる。
もういい加減に、禁煙にさせて貰おうか。
竜胆が座っているソファの隣に腰掛けると、いつものようにタバコの煙を吹きかける。
文句を言ってやろうと竜胆の方に顔を向けると、優しく微笑んでいるように見えるような瞳で私を見つめているから、文句なんて言えなくなってしまった。
「タバコ吹きかけるの辞めてって、いつも言ってるじゃん。」
控えめな態度で言ってみると、返ってきた言葉。
「さっきみたいな事するのも、煙吹きかけんのも、Aだけだし。」
それって、私だから何をしても怒らないっていう理由があるからでしょ。聞かなくてもそんなの、分かってる。
自惚れる理由なんてひとつも無い。
それでも、彼がいたから紛れた気持ちもあるから。私にとってからの存在はかなり大きいのだろう。
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うさ - めちゃくちゃ好きすぎます… (3月31日 19時) (レス) @page50 id: 4170d6f2b7 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - めちゃめちゃいいお話しでした!(蘭ちゃん流石。。。男前すぎん?惚れるわ) (1月1日 11時) (レス) @page50 id: 612ac16389 (このIDを非表示/違反報告)
可月(プロフ) - 竜胆最高 (12月27日 7時) (レス) @page50 id: fed16d8c1b (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - サバさん» ありがとうございます🥹💖 (2022年4月4日 7時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
サバ(プロフ) - さきなさん» これからも応援してます🥰 (2022年4月4日 3時) (レス) id: b9a6851691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2022年3月21日 1時