知ってしまった。(end) ページ20
伊沢さんの家の玄関、突然の言葉に、私は黙ったままでいた。
「Aちゃんはさ、俺を推しとしてみてるの?」
「ひっ」
倒れこむように腕で簡易的な檻を作られる。
やだ、いやだ、なにか胸の奥がざわつく。こんな伊沢さん見たことない。
喋らなきゃ。伊沢さんからは、かなりの怒りの感情が汲み取れた。
「すみません、すみません、怒らせてしまって、気持ち悪かったですよね、ごめんなさい」
「...謝罪してほしいんじゃない。」
髪を耳にかけられて、顔が近づいてくる。
「俺は今から君を押し倒すつもりでいる。嫌だったら殴ってでも逃げて。」
「ゃ...」
耳元が弱い。相手が伊沢さんなので、余計に意識してしまって、
「なんか、変ですよ..よっ...__!?]
体制を変えられて、足を掬われれば、いともたやすく倒れこんでしまう。
濡れているせいで、ぐちゃりという布の感触が伝わった。
「俺は、女性としてAの事が好き。___でも、君は全然気づいてくれなかった。」
はっとした。
「私を?」
「ずっと、今も、ぐちゃぐちゃにしてやりたいぐらい。」
「んむっ!」
乱暴に頬を掴まれると、食いちぎられるかの様に、唇に噛みついてくる。
本能的な口づけだった。
彼は私の憧れで、なにも恋愛の視野になんて入れたくなくて、恋を知ってしまったら、後戻りできない気がして。
「ん、ふっ、ぅ、いざぁ、さ」
殴ってでも逃げて、なんて、狡いですよ。できるわけないじゃないですか。
靴も脱がないで、伊沢さんは私に覆いかぶさって、受け入れている。
口内を乱雑に蹂躙する、肉厚な舌を、歯の列を丁寧になぞる舌を、受け入れている。
「っ、嫌じゃ、ねえのかよ...!」
唇に伝う唾液を、雑にぬぐって、そう言った。
「しっ___てしまったら、戻れないと、おもっ....」
泣きたくない、お粗末な顔を曝したくない、けれど涙はあふれてくる。
「伊沢さんを、自分だけのもの、にしたいって...ッ」
好きになったら、止められなくて、本心を隠した。
唇を噛みしめると、噛まないで、なんて言って、また後頭部を押さえつけられるようにして、濃厚なキスが始まった。
「だったらAのものになってあげる。」
「____好きだ。」
触れてはいけない唇を、知ってしまったんだ。
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てら(プロフ) - みるくれもんさん» ありがとうございます!そうです!某髭の彼らです〜。音楽を聴いたとき、絶対こうちゃんに合うなーとおもって書きました! (2020年3月14日 17時) (レス) id: 44b95f4836 (このIDを非表示/違反報告)
てら(プロフ) - みけさん» ありがとうございます!とっても嬉しいです〜! (2020年3月14日 17時) (レス) id: 44b95f4836 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれもん - はじめまして!いつも読ませて頂いてます、大好きです!!!こうちゃんのやつ、もしや髭男の曲ですか!?素敵ですよね(^^)これからも頑張ってください、体調にはお気をつけて!! (2020年3月13日 21時) (レス) id: 1ef1ccf766 (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - 第1話から心臓を撃ち抜かれました...ありがとうございます...!!とても大好きです (2020年3月10日 23時) (レス) id: 5abc98e162 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てら | 作成日時:2020年3月10日 21時