知られずにいた。 ページ19
後悔している。軽々しく、好きなんて言ったことを。
伊沢さんは私の推し、であり、憧れ。
友達や、先輩方に、付き合っちゃえばいいじゃん、なんて言葉は数えられないくらい言われてる。
そういうのじゃないんだって!伊沢さんは、近くで見てるだけでいいの!そう、まるで美術品を鑑賞してるような...あっはい気持ち悪いですねごめんなさい。
新入社員歓迎会で、仲良くなった須貝さんにはやし立てられたことがある。
「ほら、これからは伊沢がずっと近くにいるんだよ?」
何か言っておきなよ、と言われ、「え、...あ、好きです」
推しとして、というのを忘れていたがため、ずっと揶揄われる羽目になったのだが。
最近、伊沢さんと目が合う。
髪の毛を少し切っただけなのに、伊沢さんはこんな私の変化に気づいてくれてる。
「髪切ったの?可愛いね」
そうして私の髪に触れてきた。
「あっはは、お世辞でもうれしいです」
こんな人間が伊沢さんの近くにいてすみません、と心の中で自嘲する。
ポーカーフェイスで装うが心臓は破裂しそう。
作業を終えて、時計を見ると6時を過ぎていた。冬ということもあり、外は暗くなっている。
「お先です〜」
大半皆さんは、疲れて寝落ちしている。起こさないように靴を履くと、誰かに肩をたたかれた。
この手の大きさでわかる、伊沢さんだ。
「一緒に帰らない?よかったら。」
「え、?いや、お手を煩わせるわけには〜」
自分でも目が泳いでるのが解る。だが伊沢さんは良いからいいから、と貼り付けたような笑みを浮かべて一緒に外に出させた。
「そういえばツバメが低空飛行してたよね。雨が降りそう。」
「低空飛行するのって、気圧で餌が下に降りてくるから..でしたっけ..」
「お、ご名答。」
推しと会話、続けられてる。なんてのもつかの間、大粒の雨が降ったら最後、それは大雨と変わってしまった。
流石の伊沢さんも吃驚したようで、私の手を引いて走り出した。
手汗を雨で誤魔化せてよかった。そう雨に感謝しながら。
降られたね、と言った彼の毛束を伝って雨粒が落ちてくる。
それがなんとも官能的で、ぼーっと見つめていた。
どさくさに紛れて、連れられたのは伊沢さんの家だ。
雷までなってしまって、暗い中で、彼は俯いている。
「ねぇ、Aちゃんの事が好きって言ったら、どうする?」
伊沢さんの顔は、今にも泣きだしそうだった。
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てら(プロフ) - みるくれもんさん» ありがとうございます!そうです!某髭の彼らです〜。音楽を聴いたとき、絶対こうちゃんに合うなーとおもって書きました! (2020年3月14日 17時) (レス) id: 44b95f4836 (このIDを非表示/違反報告)
てら(プロフ) - みけさん» ありがとうございます!とっても嬉しいです〜! (2020年3月14日 17時) (レス) id: 44b95f4836 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれもん - はじめまして!いつも読ませて頂いてます、大好きです!!!こうちゃんのやつ、もしや髭男の曲ですか!?素敵ですよね(^^)これからも頑張ってください、体調にはお気をつけて!! (2020年3月13日 21時) (レス) id: 1ef1ccf766 (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - 第1話から心臓を撃ち抜かれました...ありがとうございます...!!とても大好きです (2020年3月10日 23時) (レス) id: 5abc98e162 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てら | 作成日時:2020年3月10日 21時