私ができる事 ページ43
｢はぁ･･･｣
車に乗り込み後部席の背もたれを倒して
ふらつく身体を沈める。
杏花｢･･･A？大丈夫？｣
A｢ん、なんとか･･･｣
退院してからの仕事の量がハンパじゃない。
これじゃあ体がいくつあっても足りないよ。
杏花｢次の現場まで時間があるから寝てなさい｣
そう言って私にブランケットを掛けてくれた。
A｢すぅ･･･はぁー･････｣
深呼吸をして目を閉じる。
目を閉じると浮かぶ姿は･･･
お姉ちゃん。
･･･お姉ちゃんが生きてるかもしれない。
もっと早く言って欲しかった。
そうすればこんなに苦しむことはなかったのに。
うんん、翔ちゃんを責めることなんてできない。
私がした事を知りながらも
私のそばにいることを選んでくれたのだから･･･
私はその現実を受け止めなければいけない。
この気持ちの整理がつくまで
翔ちゃんにも和ちゃんにも会わないって決めた。
｢きらら･････ごめんね｣
そう言って耳朶をさする
お姉ちゃんの指が震えていた。
お姉ちゃんは私のために姿を消した。
翔ちゃんは私のために私を選んだ。
ふたりとも私のためにしてくれた事だった。
じゃあ私はふたりのために何ができる？
何をしてあげられる？
私は思い出していた。
小さい頃からの思い出を･･･
忘れていることがほとんどだけど
楽しいし思い出だけは覚えていることもあった。
お姉ちゃんと行った場所
お姉ちゃんとの思い出の場所
そこにお姉ちゃんはいる。
私にはわかる。
私がふたりにできる事･････
そんな事決まってるじゃない。
杏花｢あ、お疲れ様、A？いま後ろで寝て･･･｣
車を運転する杏花さんの携帯が鳴る。
そろそろ電話が来る頃だと思っていた。
A｢起きてる、ユウくん？｣
信号で車が止まると振り返り携帯を差し出した。
杏花｢そう、中島くんからよ｣
いまユウくんには
調べてもらっていることがあって。
A｢もしもし？ユウくんお疲れ様｣
ユウ｢お疲れ、いま確認してきたけど｣
A｢うん｣
なぜか胸がギュッと締め付けられる。
その先の言葉が聞きたいような
聞きたくないような･･･複雑な気持ちになった。
ユウ｢･･･いたよ｣
途端に全身の力が抜けて
手のひらから携帯が落ちた。
ユウ｢Aちゃん？｣
足元に落ちた携帯を急いで拾い上げる。
A｢あ、ごめんね･･･それで｣
ユウ｢写真を何枚か撮ったから見てみて？｣
私は携帯を握りしめ待った。
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作者名：きらら | 作成日時：2016年12月27日 21時
