わんだふる あにまるず！

○ ページ39

だいすけ side


いぬになって生活し始めてから何日か経った。もうここまできたら、俺が拗ねてるだけなのも、意地張ってるだけなのも分かってる。

こういうの、何だっけ。往生際が悪いっていうんだっけな。阿部ちゃんに聞けばいいんだけどさ。でも、今さらごめんねする勇気がないんだ。


「ただいま…はあ、」


阿部ちゃん、最近ため息つくことが増えた。仕事が忙しそうで、朝は早いし帰りも遅い。


「あ、起きててくれたんだ。ありがとうね」


ありがとうって言うのに、なんでそんなつらそうな顔で俺のこと撫でるんだろう。お仕事大変なのかなあ。今日は金曜で、明日はお仕事なくて嬉しい日じゃないの？


「だめだなあ、最近」


ソファに寝転んで呟いた阿部ちゃん。…やっぱり、お仕事大変なんだ。


「俺、だいすけと話せないと調子出ないよ。行ってらっしゃいって言ってくれて、おかえりって迎えてくれるの、幸せだったなあ」


え、そうなの？そんなのいくらでもやってあげるのに。もしやってあげたら、お仕事の辛さも少しは和らぐのかなあ。


「だいすけの取り留めもない話聞くのも好きだし、寝るまでくっついて離れないのも可愛いなあって思うし…なんか、当たり前だったんだけど、ないと寂しいね」


仰向けで顔に腕を乗せちゃったから、俺からは顔が見えないけど、寂しそうな声。


きゃんきゃん、きゃん！


隣に行かせてって言ったんだけど、通じなかった。「お返事？ありがとね」って言われちゃった。頑張って後ろ足で立って、ケージを乗り越えようとしたら、やっと気づいてくれた。


「あ、だいすけ、だめだよそれ。腰痛めちゃうよ」


こんなときも俺の事ばっか気にする阿部ちゃんは、久しぶりに俺のこと、やさしく抱っこしてくれた。

○→←○

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す