理想と現実短編集 (ページ17)

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情熱財閥ページ17

「あーはーはー(笑)」

家の玄関先から聞こえる笑い声。

この笑い方をする人は一人しかいない。

「あ、A久しぶり！」

「久しぶりユノ。」

私の幼馴染のチョンユンホ。

･

ユノとは幼稚園の頃からの付き合いで、

昔から明るくて、社交的で、優しく礼儀正しいのが彼の魅力。

うちのお母さんはしょっちゅう「ユノ君みたいな息子が欲しかった～」なんてボヤいてるぐらい

誰がどう見ても"いい男"で、

…私がユノを好きなのは言うまでもない。

ただ残念ながら、
中学までは同じ学校に通っていたけど高校からは別々。

ユノと同じ高校に通っていた友達から聞いた話、

彼は生徒会長をやっていて
年上から年下まですごいモテたらしい。

で、才色兼備の人と付き合ってるって。

…まぁ妥当だとは思うけど。

今はお互い同じ大学３年生になって、就職活動が始まったこと以外はよく知らない。

「もーA、もう少し愛想よくしなさい！」

「あーはーはー(笑)
いつもはにこやかですよ。俺の前だけですから(笑)」

「ユノ君ごめんね～。」

本当に、ユノの前だと私は笑顔を振りまかない。

好きな人の前でこそ笑っていなきゃいけないのに、
素の自分というのかスイッチオフ状態のままで真顔のことが多い。

おおらかなユノは気にしないってわかってるから故の甘えだと思う。

…こんなんだからずっと振り向いてもらえないのにね。

「これAの好きなやつだろ？持ってきたから食べろよー」

「ん？…キムチ？」

私に渡された袋の中にはキムチが入っていて

どうやらユノのお母さんからキムチを家に持っていくよう言われたみたい。

「わぁありがとう！」

中を見ると本当に私が一番好きなやつで、

覚えてくれていた嬉しさと早く食べたい気持ちで浮かれた返事になってしまった。

「あはは(笑)
良かった。じゃあ僕はこれで。」

「ユノ君わざわざありがとうね～！」

「またね。」

ユノの姿が見えなくなるまで後ろ姿を見守った。

って言っても隣なんだけど。

「ユノ君って好青年でいいわ～」

「そうだね。」

そんな好青年に私はいつも"またね"その一言しか言うことが出来ないんだ。