揺さぶられる。 ページ6
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「今は仲良くないんだ。」
北人「そうなのかもね。」
その間、少し、ほんの少しだけ沈黙が続いた。
彼女の眉は普通に戻っており、真顔だった。
「吉野くんは好きだった？彼のこと。」
北人「もちろん。だーいすきだったよ。」
そう優しく答えると彼女は満足げな顔をした。
「そうなんだね。」
やっと彼女とまともに会話できた気がする。
この喜びはなんなんだ。
「あっ、そうだ慎くん！」
すると、彼女は視線を慎に向けた。
俺も思わず視線をやると、慎はぽわっと笑顔になっていた。
慎「はい！」
「慎くんと帰るバス一緒だと思うから、一緒に帰らない？」
慎「えっ？いいの？」
北人「なっ！」
全く予想できない展開だった。
俺が誘えなかった下校をまさか彼女自ら誘うだと？しかも慎に！俺の目の前で！
慎はちらちらとこちらを見て気を遣いたい様子だった。
俺はそんな様子が俺の自尊心を傷つけた。
北人「行けよ。気にすんなよ。」
そう言ってしまった。
慎「じゃ、じゃあいいよ。」
「あ、もしかしていつも吉野くんと帰ってる？ごめんね。」
慎「いやっ、大丈夫！今日は一緒に帰ろ!地元も案内するし！」
「えっ、ほんと？嬉しい!じゃあ放課後ね。」
慎「うん。よし、授業戻るぞ。行くぞ、北人。」
すっかりのぼせあがった慎。
耳が真っ赤だ。
さっきまで俺はまともに話せて嬉しいと思ってたのに。
なんなんだ、今の感情は。
すっかり慎のことが羨ましくなってる。
そして、苛立っている。
ガララッ_____
先生「おい、2人ともどこ行ってたんだ。」
慎「保健室に行ってました！」
教室に戻ると、特に先生は怒らなかった。
慎はニヤニヤしながら自席に座る。
そして、俺とAは同じところへ向かって隣同士で座る。
「…ノート見る？」
座った瞬間、彼女はノートを差し出して来た。
北人「いいの？」
俺は相変わらず猫を被って、受け取った。
中身をパラパラ開くと、彼女が書いた最後のページには
『私の電話番号‼︎ 090-×××……
LINEとかしてないからごめんね。良かったら追加して。』
と書いてあった。
どういうつもりだ…？と思いながら俺はその部分だけを切り取って、ノートを返した。
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作者名：ZEA | 作成日時：2022年1月5日 0時
