ふたり ページ12
気付いたのは小さい頃だった。
私の行動範囲に
もう一人の『わたし』がいる。
パパやママと来た動物園
コッチの象サンの柵から見える
アッチのお猿サンの網
その向こう側に
鏡をみるような自分と同じ顔。
「ママ！あっちにAちゃんがいる！」
「え？そういうのは他人の空似っていうのよ」
一度じゃなくて何回もみるもんだから
実は生き別れの双子の姉妹がいるんじゃないかと疑ってみたり
そんな事を言って両親を困らせたりもした。
学生になって出来た友だちには
「ドッペルゲンガーじゃない？」
なんて言われて
会ったら死んじゃう？とかも思ったし
死ぬならとっくに死んでるわ
なんて思ったりもする。
それほど頻繁に会うわけじゃないけど
もう一人の『わたし』は
私の興味を刺激するには充分だった。
会ってみたい
会ってみたい
会ってみたい
まるで恋するようにそう思う
『私』にそっくりな『わたし』
どこにいるの？
駅のホームの向こう
『わたし』がいることに気付いた。
慌てて階段を駆け下り
向いのホームに駆け上る。
ちょうど電車のドアが閉まるところ
「ねぇ！」
その刹那
ドアが閉まる。
ドアの向こうのガラスから
『わたし』が『私』をみている
大きく眼を見開いて。
こんなに近くで顔をみたのは初めてだ。
やっぱり私と同じ顔をしている。
◇
あぁ…ついに。
『あなた』が目の前に現れた。
もしかしたら、こんな日が来るのではないかと思っていた。
どうしよう？
どうしたらいい？
幻だと思っていた『あなた』
あの日、動物園で見た時から
私の心の中にずっと居た『あなた』
ついに…
ついに…
…ついに…。
ガラスの向こうで大きく眼を見開く『あなた』
次に会うときは
多分。
◇
街の中にクリスマスソングが流れる。
「A、ね、あの子じゃない？」
一緒に歩いていた友だちが
前から来る女の子を見つけ
私に声を掛ける
目の前には、似たような服装で
そっくりな顔をした『わたし』
「本当にそっく…… キャーッ！A！」
友だちの声が
凄く近くに
凄く遠くに聞こえる。
「どうして！どうして目の前に現れるの?!
止めてよ！気持ち悪い！！！！！！！」
私が恋するように会いたかった『わたし』は
そういって私のお腹に刃を突き刺した。
私は焦がれた『わたし』に未来を奪われた。
『わたし』は……望む未来が手に入ったのかしら……？
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芙咲子(プロフ) - 梨沙さん» 梨沙ちゃん、こちらにもコメントありがとう。この話はもう何ヶ月もぼーっと考えていたものです。山梔子のいい香りを嗅いだ時から。 (2016年8月20日 23時) (
レス) id: 103d3f0526 (このIDを非表示/違反報告)
梨沙(プロフ) - このタイミングで芙咲子さんのお話が読めて嬉しいです！深いわ、口がなければ言いたいことは言えなくなるもの… (2016年8月15日 14時) (レス) id: e385bf4ae4 (このIDを非表示/違反報告)
芙咲子(プロフ) - 網場さん» 網場さん、コメントありがとうございます。思いついた時にふら〜っと書きにきますので…ふら〜っと遊びに来てくださいね。 (2015年7月15日 21時) (レス) id: 22ee155259 (このIDを非表示/違反報告)
網場 - 貴方様の世界観が大好きです！これからもいい作品を期待してます！！ (2015年7月13日 23時) (レス) id: 247160801d (このIDを非表示/違反報告)
芙咲子(プロフ) - 梨沙さん» 梨沙ちゃん、運悪くないよ。だから大丈夫だよ？…………多分…(￣▽￣) (2015年6月2日 22時) (レス) id: e9bb145dec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芙咲子
| 作成日時：2013年10月13日 0時
