⑨ダンボール戦機Ｗ～裏束縛～ (ページ25)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:36,863 hit

解凍後はページ25

「君も、ザ・シークレットに呼び集められた数少ない技術者だったな」

「…俺がそうやって集められた理由…分かりましたよね？」

「…あぁ」

ジンは頷く代わりに、ラキアから目をそらした。

ラキアは俯いたまま、言う。

「…俺にだって…無いんですよ、姉さんがどうとか言う権利なんか」

自分を嘲笑うラキアは止まらない。

「…俺も姉さんも、同じですよ。同じで、違うんです。俺達技術者は、作った技術を悪用されたとき…ハンパ無い絶望を覚えるんですよ」

「…僕も自分の行動で周りが傷付くのは嫌だ」

ジンが言うと、ラキアは頷いた。

「姉さんは典型的な技術者です。歴代、名を残した技術者は早死にしてしまったり、自身で死んだりしてしまっています。自分の研究が悪用されてしまったからですよ」

ＰＳの件は、ジンさん、あなたがいたから姉さんはそんなこと無かったですけど。

今回は違います、とラキアは言った。

「今回悪用されてるのは、姉さんの技術ではなく、…姉さん自身なんです」

「！？」

「姉さんの脳内で、技術はどんどん進化していきます。それを狙ったディテクターがジンさん達ごと巻き込んで、いや、世界を巻き込んでいるんですよ」

「…だが、―――彼女は悪くはないはずだ」

ジンが一瞬詰まって言うと、ラキアは寂しそうに笑った。

「まだ、呼んであげられないんですね…姉さんの名前」

バンさん達からは聞いてましたけど。

ジンは黙って俯き、「呼べないんだ…」と呟いた。

「口に出すことを…この僕の口が許してくれないんだ」

ラキアは黙ってＣＣＭを開いた。

サーモグラフィックの色分けは、完全なモノになりかけていた。

「…姉さん、この温度だとそろそろ昏睡してしまいますね」

俺の研究ですから、死ぬことはないように作ってますけど、…―――。

言うのを止めるラキアに、ジンは無言で先を促した。

「…作ってますけど…解凍した際の後遺症は、…重いはずです」

下手すれば植物人間ですよ。

軽くても数ヶ月は声が出ないと思います。

絶望的なことを言われ、ジンの頭は目まぐるしく回りだし。

だんだん意識が遠のいていくのを感じた…。