⑨ダンボール戦機Ｗ～裏束縛～ (ページ23)

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隣ページ23

「…何で急に…」

届いたメールは、ロンドンで研究を続けている山野準一郎からだった。

そこでひとまず、一行はダックシャトルに乗って、博士がいるという天文台に向かう。

今は夜の上空。

星の見えない、曇り空の中をダックシャトルは進んでゆく。

「…何も、見えない…」

全員眠っている中、ジンは一人シートに座って呟いた。

座席の並ぶこの部屋は、電気が消されて真っ暗だった。

それをつける気にもならず、窓側に座って外を呆然と眺めていた。

いつもなら、隣には、―――。

今日は、隣は―――。

あれから、僕の口は君の名前を呼ぶことも出来ない。

いつもなら、君が、…君がっ、…居る、のに、な…―――。

勝手に嗚咽が漏れて、勝手に涙が溢れ出す。

何度目だろう。

君がいなくなって…何度涙を流したのだろうか。

昼間のラキアの言葉が、頭に響いてきた。

『ま、“嫌われた”とは思わないことですよ。姉さんは皆さんを巻き込みたくないが故に、皆さんの元を離れたと思いますから』

…いっそ、あの場で、思い切り「大嫌い」って叫んでくれれば、よかったのに。

…あの場で、僕をフってくれればよかったのに。

君は最後まで優しいまま、僕の名前を僕の胸に突き立てていった。

君の口から聞いた、僕の名前には、君の持つ君の思い出が、全て…。

―――本当に、全て、のせられていたようで。

僕の名前を呼んで、もう振り返ることの無かった君は、空っぽだった。

全てを僕に渡してから行ったみたい…なんかそんな感じがするんだ。

今の君の中には…何がある？

全てを捨てていった…なんて事はないよな？

…確かに、まだ今の僕のままでは君を護るって…もう、言えないよ。

僕に全てを委ねろなんて、僕は酷いこと言ったね。

結局は君は全部自分でやってた。

―――戻ってきて、なんて、…言っていいのか。

今の君の状況は分からない。

ラキアが言ったサーモグラフィックの話、出来れば嘘であることを願う。

「ダメですよ。そんな顔で姉さん助けに行くつもりですか？」