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二日酔いで唸っていた男はしばらくして口を開いた。
｢で、そこにいるのは誰だよ。｣
｢……いや…………頭が潰れてる間に色々あったんだよ。｣
今も尚ベックマンの後ろに隠れているつむぎ。
男の言葉にビクッとしたのをベックマンは見逃さなかった。
｢…………｣
｢…………そろそろ出てこい。｣
｢ちゃんと説明してやるから出てこい？｣
ベックマンとホンゴウに言われても尚頑なに動こうとしないつむぎに痺れを切らしたのは男の方だった。
｢誰だ勝手に船に乗っけたのはァ？｣
そう言ってひょっとベックマンの後ろを覗き込んだ男。
覗き込んで来るとは思わなかったつむぎは反射的にベックマンのマントの中に潜り込んだ。
｢おいっ！｣
｢はっはっはっ！さっきはベックマンに怯えてたってぇのに今は頭に怯えてらァw｣
ホンゴウの豪快な笑いにベックマンも思わずフッと笑ってしまった。
｢まあ頭、そのまま聞いてくれや。｣
そう言ってホンゴウはつむぎがいつの間にか甲板に倒れていて、自分がどうやってここに来たのかも分からないのだと簡単に説明した。
もちろん身体の傷については隠して。
｢ほぉ……だが、俺たちは海賊だ。次の島で降ろすしかないぞ。｣
｢…………その事なんだがなぁ………………ちょっと事情があってな｣
ホンゴウの歯切れの悪い言葉に男は顔をしかめた。
｢あのなぁ……いくら俺たちが強いからって、女が居ちゃ｣
ベックマンの背中にしがみついていたつむぎ。
男の言葉も一理ある。
男所帯の中に女ひとり、トラブルがないわけが無い。
火傷の痕や傷痕が薄くなるとホンゴウが言ってくれて、そのための治療もしてくれると言ってくれて、本当に嬉しかった。
そう、嬉しかったのだ。
今まで身体を気遣ってくれた大人はホンゴウが初めてだった。
ベックマンもなんだかんだ言って背中に引っ付いている私をそのままにしていてくれている。
顔も名前も知らないこの船の船長とホンゴウが何か話しているが、ベックマンの背中は暖かくて、さっき泣きた影響もあり瞼が重くなってきていた。
無意識にベックマンの、袖を引いた。
なんだとつむぎを見るベックマン。
つむぎは眠い目を必死に開けていた。
眠そうなつむぎを仕方なく座ったままだき抱えると、つむぎはすぐに目を閉じて完全にベックマンに寄りかかって寝息をたて始めていた。
もう頭の事など記憶から消えたかのようにつむぎは眠ってしまった。
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作者名：こゆん | 作成日時：2022年9月2日 19時
