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私は、彼らの方を振り向けなかった。
何も言わない2人にこんな醜いものを見せて、後悔した。
見せなきゃ良かった、言わなきゃ良かった。
それからまたしばらくして、椅子に項垂れたホンゴウがゆっくりと口を開いた。
「…………結論から言うと、多分それは一生消えることは無い。薬もあるが、そこまで酷いとなると一生かかっても消えねぇ。」
何となく、予想通りの答えだった。
少しだけの期待も、すぐに打ち砕かれてしまった。
「だが、少しではあるが薬で薄くは出来る。」
「……次の島で調達できるか?」
「それなりに大きい島だからな。大丈夫だろ。」
打ちひしがれてる私をよそに、トントン拍子で進んでいく話。
1人頭の上でハテナを作っていた。
この2人は何を言っているのだろうか。
「あの……」
「ん?あぁ。心配すんな。頭には上手いこと……そういえば頭はどうした?」
ベックマンに目を向けたホンゴウ。
ベックマンはため息混じりに言った。
「頭なら昨日のアレで酔いつぶれてる。」
「ったく、あれほど気をつけろって……」
つむぎは未だに理解出来ずにいた。
頭とは?
ベックマンがこの船の船長さんなのではと考えていた矢先だ。
他に船長さんが居るという新事実に、青を通り越して顔面蒼白だったと思う。
慌てたホンゴウが大丈夫だと取り繕ってくれるが、ベックマン以上に怖い人がいるのかと項垂れそうになった。
「起きたらぜってぇここに来るだろうから、そしたら説明してやるよ。だから……」
説明してくれるとは言っても、その人がベックマンよりも怖い人なら私はどうすればいいのだろうか。
出来れば会いたくないし説明なんていらないから私を隠して欲しい。
なんなら、このまま逃げてしまいたい。
「逃げたいって顔してるが、ここは海のど真ん中だぜェ」
何故か考えている事が筒抜けでベックマンに鋭いツッコミを入れられてしまい、涙目だった。
と言うか顔に出ていたなんて。
「………………これはベックマンが最初に怖がらせたせいだな。」
「………………」
ぐうの音も出ないベックマン。
確かにそれが原因なのは分かるが、副船長として警戒するのは当たり前だ。
「とりあえずここでゆっくりしてな。今他のやつに部屋用意させてるからな。」
「部屋?」
「次の島まで1週間はかかるからな。部屋があった方が気が休まるだろ?」
そう言って頭を撫でられた。
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作者名:こゆん | 作成日時:2022年9月2日 19時