▽北人 ページ38
「っ、あれ?」
『おかえり。Aちゃん。』
?!??
どうして。
『ちょっと、逃げようとしないで。』
「北人さん…?!」
気持ち悪いくらいに優しく腕の中へ引き寄せられた。
私、お城にいたのに。
何で北人さんの洋館にいるの…っ?
『怨念でAちゃんをここへ呼んじゃったからだよ。』
「え…。」
…?
今、私が思ってる事に答えた?
『 そ う だ よ ♡ 』
強引に唇が奪われた。
『ねえ口開けて。』
「や、嫌ッ!」
以前より強引さの増した北人さん。
悪霊化して、怨念で私を呼んだ…?
それに心も読めるの?
顔を掴まれて無理矢理入ってきた舌。
好き勝手に口内を味わってくるそれへの嫌悪感から牙を立てた。
突き離したが、唇の柔らかさが強く残っている。
手の甲で拭って感覚を消す。
血の味が、じゅわっと口内に広がった。
あ…。
北人さんの、血…。
「…っ。」
『美味しい?』
図星だ。
美味しいと思ったこともバレてる…。
『もっと飲んで良いんだよ。』
「え、あ…。」
『食欲には抗えないよね〜。』
シャツのボタンを何個か外して抱き付いてきた北人さん。
『ほら♡』
目の前に露呈された獲物。
血の香りがして気持ちが高ぶる。
思わず舌舐めずりした。
欲に負ける、意思の弱い自分。
「い、いただきます…。」
噛み付くと北人さんが身震いした。
『気持ちいいね〜これ。』
「…ッ、?!」
突然噎せた。
咳き込んで彼を睨む。
なに?
体がおかしい。
動きが鈍くなってきた。
「この血…、」
『うん。Aちゃんももうじきこっち側になれるよ。』
倒れた私を見下ろして微笑む北人さん。
私、死ぬんだ…。
幽霊になってこの洋館の中で囚われるのか…。
『美味しいものって、大抵身体に悪いんだよ。』
「また騙したんですね。私のこと…。」
『あはは、Aちゃんほんとチョロい。』
悔しい。
悔しい…。
「許さない…っ!」
『一生可愛がってあげるから安心してよ。いや、もう死んじゃうから一生じゃないね…永遠?(笑)』
開けていられなくなった目を閉じる。
『待ちきれないからトドメ刺しちゃおっかな。』
「い゛ッ…?!、ぅっ…」
首を締められた。
『やっと僕のモノになってくれたね。』
END.
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作者名:If | 作成日時:2022年8月7日 8時