北人 ページ17
「どなたか、いらっしゃいませんか?」
一声かけて足を踏み入れる。
たくさんのクモの巣と埃を見てすぐに無人だと分かった。
ちょっとホラーチックではあるが、行き先もないので隅の方で座る。
「広いお家だな…。」
月明かりが室内を照らしている。
高い天井を見上げて孤独を感じた。
泣き疲れた私は次第にうとうとし始め…。
上着を枕にして横になった。
膝を抱える。
「おやすみなさい…。」
『あれ寝ちゃうの?お話しようよ。』
「きゃっ?!??」
突然男性の声がした。
飛び起きて後退りする。
怖いくらい綺麗な男の人が現れた。
「あ、えっと。ごめんなさい…。勝手にお邪魔してしまって…!」
『僕も似たようなものだからいいよ。』
「そうなんですか…?」
どういうこと?
『人が来るなんていつぶりだろう?ふふ。』
「あはは…。」
って。
この人、よく見たら足が透けてる…!?
「幽霊?!いやぁぁぁあ」
『そうだよ。気付くの遅くない?』
いやいや。
無理。
ここから逃げなきゃ。
…って、体が動かない?!
『金縛りかけちゃった♡』
「…っ!ふ、…?!」
私の目の前にしゃがんだ幽霊さん。
じっとこちらを見てきた。
『あれ、目が腫れてるね。』
腫れて少し熱を持ったまぶたに手が近付く。
『あ、そういえば…実体が無いから触れないんだった。(笑)』
「…。」
ケラケラ笑う。
なんか楽しそうに話すなぁこの人。
さっきは、慰めようとしてくれたのかな?
悪い幽霊じゃなさそうかも…?
『僕は北人。君は?』
「…Aです。吸血一族の王女。」
『へえ〜。』
金縛りからは解放されたが、再度逃げ出そうとは思わなかった。
北人さんとお話してみたくなったから。
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作者名:If | 作成日時:2022年8月7日 8時