『柊』の道具 ページ38
目を覚ますと、真っ白な天井が視界に入った
薬品の独特の匂いが辺りに漂っている
「……やっと起きたか」
私は上半身を起こし、声が聞こえた方へと視線を移す
そこには、私の大嫌いな人物がいた
黒髪に、冷たい瞳の男
「何でここに、君がいるの?」
柊暮人
柊家の次期当主候補
私が女だと知っている、数少ない人物だ
暮人が言う
「そんなに嫌そうにするな。俺だって好きでおまえのお守りをしていたわけじゃない」
そこで彼はカルテを取り出す
それを捲りながら、彼は言う
「おまえが倒れた原因は、内臓の損傷による出血多量。左腕は骨折。無理に腕を動かしただろう、酷い有り様だったぞ」
どうやら骨折していたようだ
佐伯からの攻撃を受けた時だろうか
全く気づかなかった
「……私はどれくらい寝てた?」
「一週間弱だ。おまえの従者たちも心配してた。後で元気な顔でも見せに行ってやれ」
そういえば、いつも側にいる従者たちがいない
あの二人は何処に行ったんだろうか
私の心情を見透かしたように、暮人が言う
「おまえの従者たちは先ほど気絶させた。一週間、ろくに睡眠もとっていなかったようだからな」
「だろうね。二人は私のことが大好きだから」
厳密に言うと、少し違うが
だが、今はそんなことはどうでもいい
「で、結局君は何しにここへ?何か要件があるんでしょ」
「父上がおまえを呼んでいる。着替えた後、父上の元へ来い」
そう言って彼は、男用の制服を投げつけてくる
真新しいものだ
前のものは、あの戦闘で使えなくなってしまったのだろう
私はその服に着替えようとするが、暮人がいつまでたっても出て行ってくれない
「ねぇ、着替えたいんだけど。出て行ってくれないかな」
「その前に、おまえに聞きたいことがある」
制服のタグを外しながら聞き返す
「何」
「父上は、おまえを使って何をしようとしている?」
私はその質問に、顔を上げた
彼は私を真っ直ぐ見つめていた
その瞳を見つめ返しながら、私は答えた
「何をしようとしている、ねぇ。そんなのこっちが聞きたいよ」
「……何も知らないのか?」
「天利様が考えていることは、流石の私でも理解できないからなぁ」
本当に、何であんなことを思い付くのか
力が欲しいから
どうしようもなく、力が欲しいから
人間は禁忌を犯す
「……ならいい」
暮人はそれだけ言って、部屋から出た
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もちもち - 依鶴さん» コメントありがとうございます！ご期待に添えれるかはわかりませんが、頑張ります！ (2017年2月25日 18時) (
レス) id: 0767b2f3df (このIDを非表示/違反報告)
依鶴 - プロローグから惹き込まれました！とても楽しみにしてます！ (2017年2月24日 16時) (レス) id: b2da2b82b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちもち | 作成日時：2017年2月22日 14時
